タイ・バンコク – 2024年11月7日 

タイ商工会議所および貿易委員会名誉会長のカリン・サラシン氏の開会宣言によってスタートした「第50回日本・ASEAN経営者会議(AJBM)」がオークラ プレステージバンコクホテルにて開催されました。経済同友会 との共催で開催された本イベントは本年で50周年を迎え、各国の主要な経営者、政策立案者、関係者が集い「持続可能な未来に向けた強靭なパートナーシップの構築」をテーマに各国の持つ課題についてタイの産業大臣アカナット・プロムファン氏の支援のもと、地域課題に取り組むための各分野クロスセクターによる連携の強化が議論されました。 

主なテーマとなった4つの課題:

  • 食料安全保障:ASEANのアグリフードセクターにおける持続可能な取り組みを推進し、タンパク質の多様化、気候変動に強い作物の生産など安定した食料供給体制の構築が重要であることが強調されました。 
  • 持続可能な観光:観光が地域に与える影響を考慮し、利益が公平に分配され、資源が守られるよう、ESG(環境・社会・ガバナンス)の原則を取り入れた観光、地域密着型の観光、公正な賃金政策の方針が示されました。 
  • モビリティ:電気自動車やスマート交通システムの導入など、都市化にともなう持続可能な交通対策について、日本のJICA協力によって開発されたバンコクの交通制御システムも紹介されました。 
  • 人材育成:日本とASEANの人材が相互に移動できる新しい人材プラットフォームの導入が検討され、労働力の流動性向上を目指す取り組みが発表されました。 

本会議での議論はホワイトペーパーとしてまとめ、日本およびASEAN加盟国政府に提出されました。この国際会議を通じて、日本とASEANが経済発展を支援し、より深い協力関係にあることが改めて強調されました。 

経済同友会の日ASEAN委員会委員長であり、ANAホールディングス株式会社特別顧問の平子裕志氏は経済同友会が先進的な取り組みを通じて有意義な成果を積極的に行っていくこと、そして、今回の会議のテーマが日本とASEANの協力関係は世界的に模範を示せる可能性を秘めており、この節目が共通の価値観と相互利益に基づく国境を越えたパートナーシップを強化する場になると述べました。 

また、日本とASEANが直面する人材の流動性やスキル向上の課題に対して、革新的な人材(HR)プラットフォームのイニシアチブが発表されるとし「このプラットフォームによって人々が新しい産業で必要とされる技術、リソース、雇用機会にアクセスできるようになる。急速に変化する世界経済情勢のなかで、国際競争力のある労働力を育成するため、より柔軟に成長を促すこの取り組みは非常に重要な一歩になる」と考えを表明しました。 

同じく経済同友会のアジア委員会委員長であり、みずほフィナンシャルグループ取締役会長の今井誠二氏は次のようにコメントしました。 

「現在ERIAやSOMPOホールディングス、サントリー、ANAホールディングスといった主要な日本企業と協力し人材プラットフォームの構築が進行中である。また、このプラットフォームは法的な枠組み構築に焦点を当てることで、国境を越えた人材流動性の促進や、人材の育成を行うことで雇用を創出し、労働力不足に悩む企業の支援や包摂性の向上を図り、経済的な利益をもたらすことを目指している。AJBMの議論を通じて、持続可能で統合されたASEANの実現を目指したい」と考えを述べました。 

YCPホールディングスの取締役兼グループCEOである石田裕樹氏は、AJBMが各国のビジネスリーダーや政策立案者が見識を交換することでパートナーシップを築き、日本とASEANに利益をもたらす協力体制の枠組みを構築するための重要な国際会議になると強調しました。議論の成果は各分野それぞれ実行可能な解決策と洞察がホワイトペーパーに集約されており、日本とASEANの協力関係を強化し、経済発展と持続可能な未来を推進するための具体的な提言が盛り込まれていると述べました。 

このホワイトペーパーでは主に3つの課題に対してそれぞれの具体的な対策が提言されています。 

食料安全保障課題では、持続可能な農業の枠組みを示し、気候変動に強い作物の導入を推進し、環境や地政学的な圧力からASEANのアグリフードを守るための政府と民間のパートナーシップの強化をするなどの取り組みに焦点を当てています。 

モビリティ課題では経済生産性を支えるため、都市化による交通渋滞を緩和、公衆衛生の向上を目指してセクター間の連携とスマート技術の活用を強調しています。 

観光課題においては、持続可能な成長を目指し、観光による経済的利益をより公平に分配するため、代替観光地の推進や環境に配慮した取り組みを強調しています。 

タイ商工会議所大学のタナワット・ポンウィチャイ学長(准教授)は、AJBMが日本とASEANの協力関係を強化するための次の3つを提言しました。

  •  多部門協力の推進:AJBMは、各国地域の課題に包括的に対応するために、官民パートナーシップを強化することを推進します。資源や専門知識、資金を各分野で共有することで、インフラ、クリーンエネルギー、公共モビリティの分野においてASEAN全体で持続可能で効果的な発展を図ります。 
  • 強靭な技術への投資:AJBMは、精密農業や、AIを活用したモビリティ管理、再生可能エネルギーなど持続可能な未来に不可欠な技術投資を推進します。気候変動に強い作物への生産支援や再生可能エネルギーの普及に取り組むことで、日本とASEANが環境問題に対処し、より快適な暮らしを目指します。 
  • 持続可能な取り組みとECOスタンダート基準の拡大:AJBMは、ホテルのエコ認証や廃棄物削減の取り組み、低排出ゾーンの設置など、業界全体でグリーン基準を採用することを提唱します。環境への影響を抑える取り組みを行うことで、日本とASEANがサステナビリティをリードする位置付けとなることを目指します。 

閉会にあたり、カリン・サラシン氏は、今回の会議が日本とASEANの経済協力における重要な節目となったことを強調し「共通の課題に直面する中、この会議を通じて持続可能性と強いレジリエン 

を築くため、決意を新たにした」と述べました。私たちはこの国際会議での成果を指針とし、各国の協力を継続し、イノベーションへの投資を進めることで、日本とASEAN双方、そして世界にとって有益な未来を築くことができると確信しています。 

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