インドでは、貨物輸送の約71%を道路輸送が占めており、鉄道や水運と比べて、同国の物流システムにおいて圧倒的に大きな役割を果たしています。道路輸送は柔軟なファーストマイル/ラストマイル輸送に不可欠である一方、道路への過度な依存は物流効率を制約する要因にもなっています。YCPのホワイトペーパー「インド物流産業:成長と価値創出に向けたロードマップ」では、道路貨物輸送への過度な依存が、長距離輸送や空車回送による燃料消費の増加、物流コストの高止まり、主要幹線道路における混雑につながっていると指摘しています。

インドの物流市場の成長を持続させるには、高速道路の拡張やトラックの増車だけでは十分ではありません。道路、鉄道、港湾、貨物ターミナル、物流パークをつなぐマルチモーダル物流インフラを整備し、それぞれの輸送モードが最も効率的に担える区間を分担できる体制を構築することが重要となります。

道路輸送への依存が効率性を制約する理由

道路貨物輸送は、短距離輸送や目的地まで直接アクセスする必要がある輸送に適しています。一方、鉄道や水運であれば、より大規模かつ効率的に輸送できる長距離・大量貨物まで道路輸送に依存すると、物流効率は低下します。トラックが長距離輸送に拘束されるうえ、復路の積載貨物を確保できないケースもあり、燃料価格や主要輸送ルートの混雑によるコスト上昇の影響も受けやすくなります。

したがって、課題は道路輸送そのものではなく、統合された物流ネットワークの中で実用的な代替手段が不足していることにあります。鉄道や水運は、適した貨物であれば、より低コストな輸送手段となり得ます。しかし、信頼性の高いターミナルや保管施設、ファーストマイル/ラストマイルを担う道路網が整備されていなければ、企業がこれらの輸送手段を効果的に活用することは難しいでしょう。

個別のインフラ整備から、ネットワークとしての接続へ

インドの物流インフラは、すでにより統合されたモデルへと移行しつつあります。ホワイトペーパーでは、この移行を支える主要な取り組みとして、専用貨物回廊(Dedicated Freight Corridors:DFC)と、計画されている35拠点のマルチモーダル物流パーク(MMLP)が挙げられています。これらは、鉄道貨物輸送の能力を拡大するとともに、輸送、保管、配送の各機能をつなぐことを目的としています。さらに、港湾連動型貨物ターミナルや民間鉄道側線によって、こうしたネットワークを貿易拠点や製造業集積地まで広げることができます。

これらのプロジェクトは、それぞれ単独でも輸送能力の拡大に寄与します。しかし、より大きな価値を生むのは、それらが相互に連携して機能することです。例えば、鉄道ターミナルへの道路アクセスが不十分であったり、保管能力が限られていたりすれば、ボトルネックが輸送行程の別の場所へ移るだけになりかねません。

そのため、インドのサプライチェーンへの投資を検討する企業にとっては、個々のインフラが十分な処理能力を備えているかだけでなく、生産拠点、消費市場、港湾、ファーストマイル/ラストマイルのネットワークと効率的につながっているかどうかも重要となります。マルチモーダル物流インフラが価値を生むのは、輸送モード間で貨物を切り替える際の遅延、不確実性、追加の荷役を最小限に抑えられる場合です。

企業にとっての意味

インドの物流セクターに生まれる事業機会は、新たなインフラの整備にとどまりません。メーカーや荷主にとって、新たに整備される貨物輸送回廊は、輸送ルートや施設立地を見直す契機となります。実務上のポイントは、輸送の一部を鉄道や水運に切り替えることで、積み替え、保管、域内の道路輸送まで含めた総配送コストと輸送の信頼性を改善できるかどうかです。

一方、物流事業者は、こうしたネットワークの接続性を生かしたサービスを構築できます。ターミナル運営事業者や鉄道事業者との提携により、輸送モードをまたいだ貨物輸送を一元的に調整し、輸送スケジュール、引き渡し、配送パフォーマンスについて明確な責任体制を構築することが可能となります。

本ホワイトペーパーでは、開発事業者や投資家に対して、需要を慎重に見極めることの重要性を強調しています。有望な立地であっても、周辺の産業活動、想定貨物量、競合施設、顧客がサービスを利用するまでのペースを精査する必要があります。つまり、市場全体の成長によって新たなターミナルや物流パークの需要が自動的に創出されると考えるのではなく、接続インフラの稼働に伴い、想定した需要が実際に顕在化するかを検証することが重要です。

接続性を実際のパフォーマンスにつなげる

インド物流市場の見通しは、インフラ拡充の必要性を明確に示しています。しかし、企業がその進展を評価する基準となるのは、実際の配送コストの低下と、より安定した輸送の実現です。これらを実現するには、輸送モード間の接続性を高めることが不可欠です。重要なのは、適した貨物について鉄道や水運を実用的な選択肢として活用できる環境を整えると同時に、道路輸送が持つ広範なアクセス性と柔軟性を維持することです。

YCPのホワイトペーパー「インド物流産業:成長と価値創出に向けたロードマップ」では、この移行を形づくるインフラ整備の機会と戦略上の論点を詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

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