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オルタナティブファイナンスは、アクセス性に優れ返済条件が柔軟なことから、個人や中小企業からの関心が高まっています。中でもオンラインレンディング市場は、技術発展に伴い、伝統的な実店舗型金融機関より幅広い層へと利用者が拡大しています。
このホワイトペーパーでは、YCP SolidianceのM&Aプロフェッショナルが、今後10年間にわたり拡大が見込まれるオルタナティブファイナンス市場について、BNPL(後払決済)およびP2P(ピアツーピア)レンディングという主要領域に焦点を当てて分析しています。具体的には、分野による成功要因の違い、BNPL分野におけるM&A動向の変化(買収企業の多様化)、企業が創業初期であったり収益性が未確立であったりする場合も対応可能な企業価値評価手法について解説します。
フィンテック分野におけるBNPL・P2P市場参入およびM&Aの動向
BNPL分野では、P2Pレンディングと比較して、強力な販売拠点とブランド確立を組織的に達成することが成功要因となります。一方、P2Pレンディングは競争優位性を技術革新に大きく依存しているため、スタートアップ企業に適しており、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドからの資金調達が期待できます。
戦略的投資家、特に多様な販売ネットワークを持つ投資家は、既存販売店との関係を活用して迅速に実現しやすいBNPL分野におけるM&Aに対して、有望な投資機会として関心を高めています。
実際のM&A動向もこの傾向に従っており、BNPL分野では近年、買収企業のタイプに大きな変化が生じています。2017年から2020年までは既存のBNPL企業による経営統合が主流でしたが、2021年以降は、金融サービス企業や伝統的な銀行による買収が増加し、世界全体で取引の60%以上を占めています。この変化は、消費者へのBNPL普及や規制整備、銀行による金融サービスの範囲拡大に起因していると考えられます。
マクロ経済環境の安定化に伴い、今後もM&Aは増加していく見込みです。特に、強力な販売店ネットワークとブランド力を持つeコマースおよび小売業のコングロマリットがBNPL企業買収を推進する可能性があります。こうした企業がM&Aに向けて適切な意思決定を実現するためには、BNPLサービス普及に伴う消費行動の変化に関する情報を活用することが重要とされています。
また、M&Aの活発化に伴い、BNPL・P2Pレンディング企業の正確な価値評価に対するニーズも高まっています。しかし、対象企業が創業初期であったり収益性が未確立であったりする場合は、評価が難しいとされています。こうした場合、インカムアプローチ、マーケットアプローチ、アセットアプローチなど、標準的な評価手法を適切に行うことが求められます。
BNPL・P2P分野における株価純資産倍率(PBR)は、新型コロナウイルス流行前の他の金融業界と同水準で安定しており、プレーヤーが過大評価される時代が終了したことを示唆しています。BNPL企業のPBRは、過去5年間12倍~1倍で大きく変動した後、中央値1.35倍に収束しました。P2P企業も3倍~0.5倍で不安定に変動していましたが、現在は中央値0.75倍で取引されています。結果として、投資家にとっては、価格変動やリスクが減少し、評価額が適正な企業を特定した上で投資しやすい状況となっています。
こうした投資機会を評価するためには、競合企業との比較や、金融サービス業、特に創業初期の企業に対応したディスカウントキャッシュフロー方式による企業評価が最適とされています。
企業が事業領域や顧客ターゲット層の開拓を加速させる中、投資家にとっては、豊富な投資機会をもたらすBNPLおよびP2Pの分野を注視することが重要となります。これらの領域における成長課題と投資機会、また他分野も含めた総合的な分析にご関心をお持ちの方は、ぜひホワイトペーパー全文を無料ダウンロードの上ご確認ください。
Author
Gary Murakami
YCP Solidianceのパートナーであり、アジアを中心としたM&Aや合併後の統合アドバイザリーにおいて、現地知見を生かしたハンズオン支援サービスへの様々な実績を持つ。