金融テクノロジー(フィンテック)は近年急速に発展しており、インドのゲームチェンジャーとして、銀行・金融業界のオペレーションを大きく変化させています。
2023年、インドではフィンテックがさらに発展すると見られており、高い投資価値を伴う新たな業界トレンドが生じることも期待されています。
インドにおけるフィンテック発展の道のり
インドは、フィンテック産業の発展に成功している一方で、革新的な技術と伝統的な銀行システムを融合させる点に課題を抱えてきました。しかし、官民双方の継続的な努力により、業界全体の見通しは年々改善されています。
官民双方からの持続的な取り組みがフィンテックによる全国的なイノベーションを後押しする中で、2023年には、インド政府、企業、国民など、社会のさまざまな領域を包含する有益なフィンテック活用法が生まれることが期待されています。このように、フィンテックは、インドの金融業界に対して短期的にも長期的にも好影響を与えると考えられます。
2023年に期待されるフィンテックのトレンド
2023年、フィンテック分野ではデジタルバンクの普及が引き続きトレンドとなる見込みです。新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、デジタルバンクおよびモバイルウォレット、電子マネー、オンライン決済などの普及が加速しました。今後はさらに、オンラインレンディング、個人資産管理、保険など、その他の銀行機能についてもオンラインチャネルへの移行が進むことが予測されます。
また、暗号通貨の登場に伴って広く知られるようになったブロックチェーン技術の応用も、インドでトレンドとなることが見込まれます。ブロックチェーン技術とは、電子マネーやデジタル通貨などの取引履歴を、暗号技術(暗号で情報を保護する方法)によってブロックと呼ばれる単位ごとに記録し、ネットワーク上で時系列に沿って保管する技術です。
ブロックチェーン技術は、インドの銀行システムを変革し、金融情報管理の分散化を加速させることに繋がります。ブロックチェーンによる取引は安全で迅速、効率的という点で、利用者にもメリットがあります。ブロックチェーンがもたらすメリットは他産業のオペレーションにも影響を与え、特に小売業や支払方法を大きく変化させる見込みです。今後数年間にわたり、ブロックチェーンは民間企業から高い関心を集めることが予測されます。
これらのイノベーションは、フィンテックがインドの銀行システムを長期的に変化させる原動力となる可能性を示唆しています。具体的には、実店舗を持たない銀行として知られるネット銀行が一般に普及することが予想されます。ネット銀行は、実店舗を持たない形式だけでなく、従来型の銀行と連携することも可能です。アクセス性が高く迅速な取引が可能なため、中小企業にメリットがあるとされています。今後、ネット銀行には、民間企業、特にスタートアップ企業の成長を支える役割が期待されます。
一方、従来型の銀行でも、生産性向上に繋がるフィンテックツールの活用が進むと考えられます。たとえば、人工知能や機械学習は、財務予測、自動投資、そして金融ビジネスの意思決定に必要な情報を得るための高度な分析といった分野で活用することができます。ただし、フィンテックを使用するツールやシステムは、あくまでも人間の判断を補助する役割である点に留意する必要があります。
こうしたフィンテックによるイノベーションの導入に伴い、デジタル金融の安全性も問われています。フィンテックがインドの銀行業務を継続的に変革している中、金融サービスの安全性を最大限に維持するために、政府と金融機関の双方がサイバーセキュリティやインフラといった関連分野に対する投資を強化する見込みです。これらの措置によって規制が進むことで、フィンテックは今後もインドで継続的に普及していくと考えられます。
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