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白石 隼人

日本を拠点とするパートナー。YCP参画前は外資総合ファームにおいて、カスタマー戦略プラクティスの責任者としてブランディング、マーケティング戦略、カスタマー戦略、市場参入戦略策定のサービスを統括。

日本においては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進とともに、少子高齢化に伴う構造的な労働力不足も踏まえ、AI技術も急速に発展しており、さまざまな分野でのAI活用が進んでいます。以下に、主要なトレンドをいくつか挙げます。

  1. Generative AIと大規模言語モデルの活用
    近年、ChatGPTなどの大規模言語モデルや生成系AIが注目され、企業は業務の自動化、カスタマーサポート、コンテンツ生成などに積極的に導入しています。これにより、従来の業務プロセスの効率化だけでなく、新たなビジネスモデルの創出も期待されています。

  2. 製造業におけるスマートファクトリー化
    製造業では、AIを用いた予知保全や品質管理、工程の最適化が進んでいます。IoTセンサーと連携することで、リアルタイムに設備の状態を把握し、故障リスクの低減や生産性向上に貢献しています。

  3. ヘルスケア分野でのAI応用
    医療診断支援、患者データの解析、遠隔医療など、ヘルスケア分野においてもAI技術が活用されています。特に、人口高齢化が進む日本では、効率的な医療サービス提供や予防医療への取り組みが重要視されており、AIがその実現をサポートしています。

  4. スマートシティとエッジAIの実装
    都市インフラの管理や交通システム、環境モニタリングなどにおいて、AIとIoT、エッジコンピューティングの融合が進んでいます。これにより、リアルタイムでのデータ解析や迅速な意思決定が可能となり、持続可能な都市運営が目指されています。

  5. 政府のSociety 5.0ビジョンとの連携
    日本政府は「Society 5.0」というビジョンのもと、先進的なデジタル技術とAIを活用して、経済成長と社会課題の解決を両立する取り組みを推進しています。企業と行政が連携し、産業全体のデジタルシフトを加速させる動きが見られます。

これらのトレンドは、グローバルな技術進展とともに日本独自の社会的・経済的背景に根ざした動きとも連動しており、今後もさらなる進化が期待されます。

課題は様々なものがありますが、大きく3つ存在すると考えています。

  • 人材不足とスキルギャップ
    AIやデータサイエンスに精通した専門人材は増えつつあるが、AIをどうビジネスに活用しビジネスの成果を出していくかを考えるビジネスアーキテクトが不足しており、企業内部でのスキル向上や外部からの採用が急務となっています。技術的な知識だけでなく、ビジネス課題にAIを適用するための戦略的思考も求められるため、教育プログラムや研修の充実が必要です。

  • データ環境やレガシーシステムとの統合、組織文化など環境面の問題
    多くの企業ではデータが部門ごとに分断(サイロ化)、正確性や整合性の問題、法規制のためにリスクが取りにくい、各社の独自性が高く担当者以外は理解できないという問題が存在し、AIの学習や運用に適した環境を整備することが課題です。日本企業は従来のシステムが長い期間にわたり運用されているケースが多く、新しいAI技術との連携が難しい場合があります。既存のシステムをどう近代化し、AIソリューションと統合していくかが大きな挑戦です。DXやAI導入には企業文化の変革が伴いますが、伝統的な業務プロセスやリスク回避志向が根強い場合、変革がスムーズに進まないことがあります。経営陣から現場まで一体となった意識改革が鍵となります。

  • - セキュリティとプライバシーの問題
    個人情報保護や企業の機密情報を適切に管理しながらAIを活用するため高度なセキュリティ対策が必要です。サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクに対して、法規制や技術的対策の両面からのアプローチが求められます。

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DX、AIともに、日本企業の活用はいまだ既存業務の効率化、既存製品・サービスの高付加価値に留まることが多く、例えば全社の業務・プロセス変革、顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの抜本的な変革、企業文化や組織マインドの根本的な変革までは出来ておらず、今後の取り組みが期待されます。


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