アジア開発銀行(ADB)および国際通貨基金(IMF)の統計によると、2023年の東南アジア(SEA)経済成長率は4.7%と予測されています。同時期の世界平均予測値は2.7%であることから、東南アジアは比較的高い水準で成長する見込みであると言えます。 

 2030年にはASEANが世界最大の市場になるというレポートもあり、今後、投資やビジネスの増加によって、さまざまな産業にメリットが生じることが期待されます。また、2023年時点では、製造業、観光業、デジタル経済が、ASEANにおいて最も成長可能性が高い分野であるとされています。

製造業、観光業、デジタル経済の現状分析

ASEAN地域における成長分野として、まず、製造業で非常に大きな投資機会が生じています。製造業の発展は、電子機器や自動車といった成長著しい周辺産業にも好影響を与えることが予測されます。製造業におけるビジネス拡大は、製造業に対する需要を喚起し、企業がスケールアップするチャンスにも繋がります。

自動車製造分野では、次の3国が顕著な成長率を示しています。ASEAN自動車連盟(AAF)のデータによると、各国の年間成長率は、マレーシア45.8%、ベトナム42.3%、インドネシア31%です。また、この他に注目すべき市場として、ASEAN地域全体で自動車販売台数第3位(22.75%)であるフィリピンが挙げられます。

加えて製造業では、東南アジア各国が、国内外のビジネスにおいてサプライチェーンプロセスを多様化するために尽力しています。また、官民パートナーシップ(PPP)、地域的な包括的経済連携(RCEP)、経済特区(SEZ)、政府の税制優遇措置など、多様な取り組みが実施されています。

次に、観光業でも、外国人観光客の増加に伴いさまざまな投資機会が期待されています。また、小売業、サービス業、飲食領域(F&B)など、周辺産業でもビジネスが活性化する可能性があります。観光業が成長を実現するためには、次の2点が重要とされています。
(1)アジアをはじめとする世界各国からの観光客数回復
(2)マレーシアやインドネシアで実施されているビザプログラムのような旅行奨励施策を、各地方自治体が積極的に推進すること

最後に、東南アジアで最も重要な産業として、デジタル経済が挙げられます。世界各国がデジタルトランスフォーメーション推進に注力している現状と、フィンテックや技術系スタートアップといった有望分野にも関連することから、デジタル経済には高い成長性が期待されます。さらに、ASEAN加盟6カ国では、流通取引総額(GMV)が2025年までに3,300億ドルに達すると予想されており、今後デジタルプラットフォームに対する大幅な支出拡大が見込まれます。

ASEANにおけるデジタル経済進展にはさまざまな要因が影響しますが、業種を問わずあらゆる経済領域を総合的に発展させることが将来的な成功に繋がります。新規市場参入に際しては、まず中小企業に対する投資を検討すべきです。中小企業は2020年時点で東南アジアの全企業中約97%を占めており、非常に重要であるためです。

東南アジアにおける成長トレンドと投資環境
東南アジアでは今後も経済が好調に推移すると予測されていますが、経済発展を継続させるために解消すべき課題も抱えています。具体的には、インフラ整備、人材のスキルアップ、環境の持続可能性向上などが挙げられます。こうした課題を解消し、ASEAN地域全体を活性化するためには、官民の連携が不可欠です。

また、ASEANにおける製造業、観光業、デジタル経済が、課題を抱えながらも好調に推移すると予測されている要因として、下記3点が挙げられます。
(1) ASEAN加盟国のGDPは、全体で3.2兆米ドルに上る
(2)労働市場に参入する年齢層が比較的若い(平均30.2歳)
(3)ASEAN内外での貿易・投資において地政学的に有利なポジションである

上記のように、ASEAN地域には固有の有利な状況があります。そのため、成長可能性が高い産業において、現在の課題解消と将来的な成長を実現するために投資することで、長期的にメリットを得られる可能性があります。ASEAN地域は現在、市場参入と投資を積極的に検討し、ビジネスチャンスを模索するべき状況にあると言えます。

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