世界の水耕栽培の市場規模は2022年時点で約377億米ドルを記録しています。2027年にはCAGR7%、市場規模534億米ドルに達すると推定されています。現在、世界最大の市場は北米とヨーロッパですが、近代的農業のメリットが広く知られるにつれ、アジア太平洋地域も（北米と並んで）CAGR17%で急成長すると予想されています。特にフィリピンのように、都市部に人口が集中し、農業を経済的基盤とする国ではその傾向が顕著です。
フィリピン経済における農業の重要性は、新型コロナウイルスのパンデミックによって高まっています。首都圏などの都市部では、物流の問題で他地域からの作物や農産物の輸入が妨げられ、2020年～2021年に飢餓率が上昇しました。農業専門家は、水耕栽培とそれに伴うアグリビジネスは、フィリピンの農業問題を解決する可能性があると見ています。
フィリピンにおけるアグリビジネスの課題解決に向けた取り組み
フィリピンでは長年にわたり、水耕栽培の普及に向けて、農業専門家による長期的な取り組みが行われてきました。その一つが2005年にPrimitivo Santos博士とEureka Ocampo博士が考案したSNAP（Simple Nutrient Addition Program）で、そのシンプルさから、フィリピンで最も広く採用されている水耕栽培法の一つとなっています。SNAPは、ミネラルを豊富に含むSNAP養液の入った貯水槽の上に苗を吊り下げる、低コストなKratky法を採用しています。
新型コロナウイルスの流行に伴うサプライチェーンの問題によって、水耕栽培への関心が急速に高まりました。フィリピンでは、ソーシャルメディアのグループやフォーラムから情報を得て、自宅に水耕栽培システムを設置するケースが増えています。専門家はこれを、フィリピン農業のボトルネックである、中間業者による高い生産コストに悩まされてきた農場から市場までのサプライチェーンの課題解決に役立つと見ています。
しかし、家庭菜園から大規模な農業ビジネスへ移行するケースが増加する中で、一般家庭やステークホルダーに対して、この国の水耕栽培システムの課題について周知を進める必要が生じています。ほとんどの商業用農園では、電動ポンプやUVライトなどの品質向上が必要なため、資本が第一の問題となります。
政府系金融機関や民間企業も資金融資の選択肢を増やしていますが、水耕栽培の長期的な成功と普及のためには、国による積極的な取り組みが不可欠です。現政権は、インフラ整備より多くの予算と資源を農業に充てることを公約しています。こうした状況から、持続可能な水耕栽培アグリビジネスについて理解を深めることは、フィリピンの食糧安全保障、さらには経済全体の改善に繋がると考えられます。
水耕栽培がフィリピンの食糧安全保障を改善する可能性や、他国での成功事例、アグリビジネス関係者への具体的な提言など、詳細はホワイトペーパーをダウンロードしてご確認ください。
