新型コロナウイルスによるパンデミックが引き起こしたデジタル化の流れは、いくつかの業界のビジネスモデルを変えました。特にフードデリバリー業界はデジタルトランスフォーメーションによる大きな恩恵を受け、インドのフードデリバリー市場でも例にもれず、劇的な変化が生じています。

Business Wireの業界レポートによると、インドのフードデリバリー市場は2022年から2026年にかけて約7億1,000万米ドルを生み出し、CAGR 28.13%で成長するとされています。同様に、IMARC Groupによる別のレポートでは、オンライン市場は2022年から2027年にかけて28.9%の成長が予測されています。このデータは、オンライン・フードデリバリー産業を取り巻く投資家の関心が高まっていることと、ビジネスチャンスを生み出すデジタルトランスフォーメーションの重要性を示しています。

オンライン・フードデリバリーのコンセプト

TechCrunchの記事によると、UrbanPiperというレストラン管理プラットフォームが、最近シリーズBで2400万米ドルを調達しました。現在インドにおけるオンライン・フードデリバリー取引の18%がUrbanPiperで行われており、SwiggyやZomatoといった大手フードデリバリーサービスが同社に投資したことも不思議ではありません。パンデミック以来、インドではUrbanPiperのようなデジタルフードサービスへの投資がトレンドになっています。

さらに、UrbanPiperのビジネスモデルは、デジタルトランスフォーメーションが、消費者・事業者双方のフードデリバリービジネスの概念を根本的に変えたことを示すものでもあります。消費者にとっては、特にパンデミック時における利便性などの利点により、オンライン・フードデリバリーが第一の選択肢として徐々に普及してきました。一方で事業者は、デジタル化によってインターネット利用者への露出が増え、デジタルソリューションによるサプライチェーンの改革などのメリットが得られるため、デジタル化の推進に努めています。

フードデリバリー市場の改革
インドのオンライン・フードデリバリー市場におけるデジタルトランスフォーメーションがもたらした改革の中で注目すべきは、「10分デリバリー」のコンセプトがです。このサービスは、ムンバイに拠点を置く食料品アプリZeptoがコンセプト化し、普及させました。Zeptoは食料品の10分以内の配達を保証するなど、迅速な対応に特化したプラットフォームです。

即時配達のコンセプトは、配達業者の負担が大きいという理由で批判を受けましたが、現在は他の主要な業界リーダーにも採用されています。ZomatoやSwiggyなどの大手フードデリバリーサービスは、すでに10分以内食料品配達の独自バージョンを開始しています。大手企業はいち早くこのトレンドに乗じていますが、市場にはまだギャップがあり、新規参入企業もこのメリットを享受することができます。

クイックコマースは食品配達の分野でトレンドになる可能性が高く、大企業だけでなく中小企業も、こうしたプラットフォームと提携することで、現在の配達業者では対応しきれないサービスが可能になります。さらに、この流れが食料品の宅配にとどまらない場合、地元のレストランとの提携も成功につながる可能性があります。インドでは、リソースの不足から中小企業のデジタルトランスフォーメーションが進んでいないため、提携の可能性を探ることは、結果的にデジタルトランスフォーメーションの推進にも繋がることが期待できます。

このように、デジタルトランスフォーメーションは、インドのオンライン・フードデリバリー市場の発展を加速させる上で、非常に重要な役割を担っていると言えます。これまでも、専門的なサービスを提供するオンラインプラットフォームなどのデジタルソリューションの活用により、デジタル時代における企業の事業領域は拡大してきました。今後はさらに、フードデリバリー業界のデジタルエコシステムが成熟するにつれて、中小企業、スタートアップ企業、大手企業など、さまざまな事業者がビジネスチャンスと新たな収益源を確保できるようになると考えられます。

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