ニアショアリング、リショアリング、フレンドショアリングは、サプライチェーンのレジリエンス強化に向けた同じ潮流の一環として語られることが多いものの、それぞれ異なる戦略です。各アプローチは、コスト、地理的条件、オペレーション、地政学といった要素を異なる形で考慮しています。YCPのホワイトペーパー「サプライチェーン再設計戦略:コスト競争力とリスク耐性の最適化」では、これらのアプローチを、異なるリスク要因に応じてサプライネットワークを再設計するための独立した手法として分析しています。実務においては、ニアショアリングは需要地への近接性を重視し、リショアリングは国内でのコントロール強化を図る一方、フレンドショアリングは政治的・経済的な連携をより重視します。

ニアショアリングの実例:Foxconnのグアダラハラへの投資

ニアショアリングは、生産拠点を主要な最終市場に近づけるアプローチです。しかし、Foxconnによるグアダラハラへの投資は、ニアショアリングがもはや低コストな組立工程に限定されないことを示しています。同社は約9億米ドルを投じ、「世界最大」とされるAIサーバー組立ラインを構築し、北米市場向けにNVIDIA GB200 Blackwellサーバーを生産する計画です。このプロジェクトは、サプライチェーンの地域化が進む中で、高度かつ高付加価値な製造機能を顧客に近い地域へ配置し、リードタイムを短縮するとともに、長距離輸送や貿易上の混乱へのエクスポージャーを低減する動きを示しています。また、現地のTier 1・Tier 2サプライヤーへの需要を高めることで、周辺地域のサプライチェーン強化にもつながる可能性があります。

リショアリングの実例:Intelのオハイオ州への投資

リショアリングは、生産を自国市場へ戻すという異なるアプローチを取ります。Intelによるオハイオ州の新たな半導体製造施設への約200億米ドルの投資は、製造機能のリショアリングが、国内生産だけでなく戦略的なコントロール強化とも結びついていることを示しています。ホワイトペーパーでは、このプロジェクトをIntelにとって過去最大のリショアリング施策と位置付けており、米国の半導体サプライチェーンを強化し、アジアの半導体製造能力への依存を低減することを目的としています。これらの施設では、AI、クラウドコンピューティング、コンシューマーエレクトロニクス向けの先端プロセスノードを支えることが期待されており、リショアリングが従来型の組立工程を単に国内へ戻すだけでなく、資本集約型かつ高度な技術を要する製造領域にも広がっていることを示しています。

フレンドショアリング:連携によるレジリエンス強化

フレンドショアリングは、地理的な近接性ではなく、政治的・経済的な連携に重点を置くアプローチです。実務上、フレンドショアリング型のサプライチェーンは、単一の工場を移転するのではなく、製造業者、サプライヤー、政府、地域機関などが連携することで構築される場合があります。ホワイトペーパーでは、その一例としてEuropean Battery Allianceを挙げています。同組織では、サプライヤー、政府、製造業者が国境を越えて連携し、域内のバッテリー生産能力を構築するとともに、アジアからの供給への依存度を低減しています。つまり、フレンドショアリングとは、生産を「自国」に戻すことよりも、信頼できるネットワークの中に重要な供給能力を集約することに重点を置くアプローチといえます。

移転が解決策にならない事例:トヨタ

すべてのレジリエンス強化策において、生産拠点を新たな国へ移転したり、自国へ戻したりする必要があるわけではありません。2011年の東日本大震災を受け、トヨタはサプライヤーネットワークを再構築し、生産設備と生産能力を複数の地域に分散しました。これにより、単一のサプライヤーで発生した混乱がグローバルな生産全体を停止させるリスクを抑えました。この事例は、生産拠点を大規模に移転することなく、サプライチェーンの多元化によって集中リスクを低減できることを示しています。企業によっては、新たな生産拠点を選ぶことよりも、重要な供給能力を単一のサプライヤー、施設、地域に依存しない体制を構築することが、レジリエンス強化につながる場合があります。

リスクに応じた戦略の選択

最適なアプローチは、企業がどのような脆弱性への対応を目指すかによって異なります。ニアショアリングはリードタイムや市場への近接性が重要な場合、リショアリングはコントロールや国内生産能力が優先される場合、フレンドショアリングは地政学的なエクスポージャーがより大きな懸念となる場合に有効です。一方、多元化は、特定のサプライヤーや地域への依存度を低減することにつながります。ホワイトペーパーでは、サプライチェーンリスク管理において、まず依存関係、リードタイム、地政学的エクスポージャーを分析した上で、さまざまなネットワーク構成を検討することを推奨しています。つまり、レジリエンス強化において重要なのは、特定の戦略をそのまま採用することではなく、自社が抱える具体的なリスクに応じて最適な戦略を選択することです。

「Resilience by Design」フレームワークの全体像について

ニアショアリング、リショアリング、フレンドショアリング、多元化は、より柔軟で適応力の高いサプライネットワークを構築するための包括的なアプローチの一部に過ぎません。YCPのホワイトペーパー「サプライチェーン再設計戦略:コスト競争力とリスク耐性の最適化」では、これらの戦略に加え、地域化、デジタルによる可視化、サプライヤーとの連携、実行に向けた実践的なフレームワークについて詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

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