ASEANでは、デジタル化進展に伴い、デジタル経済が急速に発展しています。これにより、新たな雇用創出や伝統的産業の変革など、さまざまなメリットが生じています。

世界全体がデジタル時代を迎えたことで、ビジネスの仕組みも大幅な変化を遂げています。その中でASEANは、デジタル経済における主要市場という地位を確立してきました。今後のビジネスを考える上では、ASEANデジタル経済の現状を理解し、ビジネスチャンスを活用することが重要となります。

ASEANにおけるデジタル経済の発展

ASEAN地域でデジタル経済を発展させるためには、公的機関がデジタル化推進の足並みを揃えることが最も重要です。各組織が連携し、東南アジア全体のデジタル経済成長に向けた集中的な枠組みやイニシアチブを構築する必要があります。

中でもASEANデジタルセクターは、東南アジアのデジタル環境が未発達だった時代から、旧称・ASEAN情報通信技術(ICT)セクターとしてデジタル経済の基盤を築いてきました。ASEANデジタルセクターに名称を変えた現在も、デジタルデータに関する政策と規制、サイバーセキュリティ、オンラインプラットフォーム、コンテンツ規制などの分野を統括し、ASEAN地域で革新的かつ安全、持続可能、包括的なデジタルエコシステムを確立・維持する上で重要な役割を果たしています。

また、ASEAN地域におけるデジタル経済の成長を実現するためには、各産業のデジタル化推進も不可欠です。成長を加速させる要素の一例として、金融部門におけるデジタルトランスフォーメーションとフィンテックの発展が挙げられます。また、2019年3月には、越境ECをはじめとする電子決済促進を目指し、ASEAN地域全体で統一された電子決済システムの開発を支援するASEAN電子決済連合が設立されました。さらに、民間フィンテック企業によるビジネスも国内外からの新規投資家参入を促進し、経済成長に貢献しています。

こうした状況から、2023年以降もASEANでデジタル経済を引き続き発展させるためには、官民連携が重要な役割を果たすことが予想されます。そのため、今後投資や新規市場参入を検討する際には、官民双方の取り組みに注目することが重要となります。

デジタル経済がもたらすビジネスチャンス

アジア開発銀行のデータによると、2022年、ASEANのGDPに占めるデジタル経済の割合は7%に留まり、これは中国の16%、EU5カ国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス)の27%、米国の35%に過ぎません。しかし、同レポートでは、ASEANが2025年までに世界5大デジタル経済の一角に浮上すると予測しています。ASEANにとって、急激な経済成長が見込まれる今後数年間は、非常に重要な期間となる見込みです。

またASEANでは、デジタル経済に関連する分野で新たな雇用機会が生まれています。正規従業員約10万人と、「パートナー」と呼ばれるフレキシブルなスケジュールで働く従業員約400万人が、食品配達、eコマース、顧客輸送など、幅広い分野で働いています。これらの業種は、いずれもデジタルトランスフォーメーションによって生まれたものです。

加えて、デジタル経済が企業や起業家、消費者など、社会の幅広い層に与える影響についても考慮する必要があります。

民間企業経営者や独立系事業者は、デジタル技術とインターネットという新たな手段を通じて、顧客とより密接に繋がり、市場を拡大し、業務を効率化することが可能になりました。これにより、競争力と収益が向上し、雇用機会が増加しています。

消費者にとっても、デジタル経済は、eコマースやオンライン市場を通じてより多くの選択肢、商品、サービスを選べるようになり、利便性が向上するというメリットがあります。さらに、オンラインで情報を取得したりデジタルツールを使用したりすることで、消費者がより詳細な情報に基づいて商品・サービスを購入することが可能になっています。

このように、ASEANにおけるデジタル経済の発展は、経済拡大、技術革新、生活向上を実現する大きなチャンスを生み出しています。

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