新型コロナウイルスの影響を大きく受けた1年を経て、マレーシア経済は回復の兆しを見せています。「Forbes Asia」の2021年6月の記事によると、同年3月の輸出額は前年比31%増と、過去4年間で最大の増加率を記録しました。同国のGDPはすでに東南アジアの近隣諸国を上回っており、2021年には6%から7.5%の成長が見込まれています。
「Forbes」はまた、東南アジアの他の国々も回復戦略を強化し、産業の優位性を求めて競合している中、マレーシアが経済成長を続けるためには、本格的なデジタルトランスフォーメーションが重要であるとしています。
すでにマレーシアはデジタルトランスフォーメーションを開始していますが、成長をさらに加速させるためには、ビジネス関係者のサポートが急務となっています。YCP Solidianceのホワイトペーパー「デジタルトランスフォーメーションの加速:マレーシア企業のデジタル化への対応状況」では、大企業、中小企業を問わず、デジタル化を妨げる障壁に対処することが、マレーシアがパンデミックによる損失を克服し、より高いGDP成長率を実現するために不可欠であるとしています。
デジタル化に対する現在の障壁
2018年現在、マレーシアの企業は98.5%がSME(中小企業)、1.5%が大企業となっています。国内の企業の大部分は中小企業が占めていますが、国内経済を牽引しているのは大企業であり、2018年のGDPの61.7%を占めています。
しかし、2018年の同国のGDPの成長基盤は中小企業が担っており、その成長率は6.2%でした。リスクを負うことに慎重な大企業に革新的なデジタルソリューションの導入を促すためには、中小企業がデジタルトランスフォーメーションに関して主導的な役割を果たすことが不可欠です。
大企業も中小企業も、デジタル化に関しては概ね同様の課題に悩まされています。
1. デジタルコンピテンシーの問題(中小企業:62%、大企業:38%)
2. 組織内でコンセンサスを得ることの難しさ(中小企業:48%、大企業:52%)
3. 新テクノロジーの導入コストの高さ(中小企業:55%、大企業:45%)
4. デジタル領域における専門人材の不足(中小企業:51%、大企業:49%)
デジタル化への取り組み
これらの問題に対処するため、国際貿易産業省(MITI)、マレーシア投資開発庁(MIDA)、マレーシア・デジタル・エコノミー・コーポレーション(MDEC)といった主要な政府機関によって様々な施策が導入されています。デジタルインフラの強化や、従業員のデジタルリテラシーを向上させるためのデジタルコンピテンシープログラムなどが、企業に対する支援の中心となっています。
中小企業向けの施策
· 財務省が、企業がデジタルマーケティング、CRM、給与計算サービス、電子POSなどの基本的なデジタル技術を導入できるよう、最大5,000リンギットの助成金を開始
· 中小企業に対する、デジタルサービスに必要な資金調達を目的とした5万〜100万リンギットのソフトローンの提供
· 政府がSME Corp.と共同で、特に製造業とサービス業を対象とした知識伝達のためのプラットフォーム構築計画を実施
大企業向けの施策
· 財務省が、スマートな自動化プロセスを導入する企業に対し、1社あたり約200万リンギットの助成を実施
· 企業が5GやIR4.0に移行する際の税制優遇措置や、デジタルウォレットによる消費者のキャッシュレス決済導入の促進
ビジネスの回復に向けて
新型コロナウイルスの影響によって、ビジネスの回復を着実に進めていくためのデジタルトランスフォーメーションの重要性がさらに高まりました。デジタル化を阻む様々な障壁と、中小企業・大企業ともに利用できる多様なイニシアチブを知ることが、ビジネスの回復を加速させ、マレーシア経済をさらに成長させる長期的なデジタル戦略を構築するための第一歩となります。
マレーシアの企業がデジタル戦略をビジネス計画に組み込む方法については、こちらからレポート全文をダウンロードしてご覧ください。
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