マレーシアでは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために全国的なロックダウンが延長されたことで、同国の事業所の大半を占める中小企業が、事業の縮小や一時的な閉鎖を余儀なくされています。
YCP Solidianceは、2020年6月にホワイトペーパーを発表し、パンデミックの初期段階にあるマレーシアの企業におけるデジタル化の重要性を指摘しました。1年後の現在も、経済、ビジネス開発、テクノロジーの各分野の専門家は、デジタル化の推進が中小企業を存続させるための鍵であると考えています。
ビジネスにおけるデジタルソリューションの現況
マレーシアはインターネットの普及率が高い国ですが(Hootsuite社の「We Are Social 2019」レポートによると、国民の80%がインターネット利用者)、デジタルビジネスのノウハウに関しては、同国の中小企業はまだ東南アジアの他の国々に及ばない状況にあります。「Techwire Asia」のレポートによると、オンライン上で存在感を持っている企業はマレーシア国内の3社に1社の割合に過ぎず、デジタル分野でのさらなる戦略構築の必要性が指摘されています。
しかし、時代の変化に伴い、マレーシアのスモールビジネスのアイディアは、小売、食品等の分野を問わず、Eコマースなどのオンラインプラットフォーム上で、デジタルファーストな手法で実現されることが増えています。マレーシア会社登録庁は、「The Edge Markets」の記事の中で、2020年3月から12月までの間に36万件のオンラインビジネスが新たに登録されたことを明らかにしました。
また、老舗の中小企業もデジタル化を推進しています。「Malay Mail」によると、クアラルンプールのチャイナタウンにあるマレーシア最古の老舗企業が、Grabやfoodpandaなどのフードデリバリー企業と提携してオンラインデリバリーに軸足を移し、顧客を獲得しています。ロックダウンの長期化に伴い、このように歴史ある企業も、オンラインサービスに価値を見出しはじめています。
投資の機会
中小企業がオンラインでの可能性を十分に発揮するためには、まだ長い道のりが必要です。「MalaysiaKini」で紹介されているマレーシア中小企業協会の調査によると、中小企業はソーシャルメディアに強いものの、その57%はまだ大規模なデジタル化に着手していません。
この問題を解決するために、政府と大企業は、中小企業の経営を支援し、経済全体の回復を図るための戦略を実行しています。6月下旬にロックダウンが延長された際、政府は中小企業に特別な資金援助を行う1,500億リンギット(360億米ドル)の支援プログラムを発表しました。またその数日後には、「My Assist MSME」というオンラインのプラットフォームも発表されました。この施策は、中小企業のデジタル化を促進し、緊急性の高いビジネスニーズに対応することを目的としています。
接続性の向上も、デジタル化の推進に大きく貢献します。そのため、国内の通信事業者は、2021年末まで、すべてのユーザーに1日1GBのデータ通信を無料で提供することを決定しました。こうした施策は、小規模ではありますが、デジタルソリューションの導入促進に繋がります。
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