新型コロナウイルスのデルタ株の感染者が急増しているフィリピンでは、専門家や医療従事者が、感染の拡大を抑えるために迅速にワクチンを展開するよう政府に求めています。しかし、氷点下での保管を必要とするファイザー製やモデルナ製を含む多くのワクチンが国内に到着するに従い、多くの冷蔵倉庫を確保する緊急性が高まっています。
フィリピンでは、ワクチンの普及に伴う冷蔵倉庫産業の成長が注目を集めていますが、食品や製造業といった他の産業も着実に成長しています。「Manila Bulletin」の記事によると、冷蔵倉庫産業は2021年に少なくとも10%の成長が見込まれており、追加稼働分の60%はルソン島に、40%はミンダナオ島に建設される予定です。
加速する全国規模のワクチン接種
フィリピンのワクチン戦略責任者Carlito Galvez, Jr.氏は先日、地方自治体に対し、今後数ヵ月間に全国で配布される7,000万回分以上のワクチンに対応するため、既存の冷蔵倉庫施設を拡大することを推奨しました。現在、到着したワクチンはすべて、首都圏のマリキナ市にある政府契約の保管施設を経由して、各地方自治体に配布されています。氷点下での保管を必要とするワクチンが増えるにつれ、地域のワクチン接種センターの近くに冷蔵保管設備を求める声が高まっていることを受けて、この機会に投資を検討するビジネスプレーヤーが現れています。
民間企業、特に従業員のために独自にワクチンを購入している企業は、冷蔵倉庫ロジスティクスに資産を分散させています。国内最大規模の従業員数を抱えるAyala Corporationは最近、ワクチンの保管に優先的に取り組むため、ラグナ州の冷蔵倉庫事業を買収しました。また、Cold Chain Association of the Philippines(CCAP)は、政府や民間のバイヤーとのパートナーシップを提案し、国内に多くのワクチンが到着するのに合わせて、冷蔵倉庫施設の拡大を支援しています。
冷蔵倉庫産業の拡大におけるeコマースの役割
ワクチンの普及がフィリピンの冷蔵倉庫産業の拡大を牽引している一方で、食品・飲料や農業などの産業も、この分野の大幅な成長に大きく寄与することが予想されます。新型コロナウイルスのパンデミックにより、消費者はオンラインショッピングを好む方向にシフトしており、そのことはLazadaやShopeeといったeコマースプラットフォームが現地で成長していることからも明らかです。食料品の通信販売は、昨年、国内の中産階級の家庭で数多く利用され、また、今後再びロックダウンが始まることで、さらに普及することが予想されます。
物流企業はこれに注目し、生鮮食品や食肉の需要の高まりに対応するため、既存の冷蔵倉庫のインフラを拡張しています。ロックダウンによる全国的なサプライチェーンの停止により、多くの農家では都市に出荷できない農産物を抱え、利益を失うことになります。冷蔵倉庫への投資は、こうした状況を打開するために有効です。工業用不動産の専門家は、「The Philippine Daily Inquirer」に対して、冷蔵倉庫は現在、世界的に最も安定した不動産資産であり、投資家は冷蔵設備や倉庫の需要を一刻も早く掴むべきであると述べています。
景気回復を牽引
YCP Solidianceは、フィリピンの景気回復を牽引する4大産業の内2つとして、インフラと不動産を挙げています。これらの産業は、経済が停滞している現在でも、長期的な事業計画を優先させ、持続可能なパートナーシップを構築することができています。冷蔵倉庫産業は、フィリピンのビジネスセクターの大部分のサプライチェーンにおいて、同国の景気回復の推進に大きな役割を果たします。投資家やビジネスプレーヤーにとって、注目すべき業界です。
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