新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、「生活必需品のオンライン提供」への移行が進んでいます。他の主要産業においても同様に、消費者ニーズを満たすために事業モデルの見直しが図られています。
eMarketer社の業界レポートによると、米国のオンラインでの食料品売上高は、2020年に前年54%増の958億2,000万ドルに達しました。さらに、2021年の食料品売上高は1,129億ドルになると予測されており、今後も成長が続くと考えられます。
アジアにおいても同様の傾向が見られ、さまざまな食料品チェーンがデジタル化に取り組んでいます。
デジタル時代の小売ビジネス
食料品配送のデジタル化の浸透は、ネット人口の規模に比例しますが、近年のASEANにおけるeコマース普及率の上昇は良い兆候だと言えます。業界レポートによると、2020年には東南アジアのインターネットユーザーが約4億人に達しました。デジタル志向の消費者は日々増加しており、2025年にはeコマースの市場規模は1,460億ドルに達すると予想されています。特に、食料品のオンライン販売は重要な役割を果たすと考えられています。
デジタル化社会の国内での企業活動を分析する上で、食料品メーカーがどのようにデジタルトランスフォーメーションを進めているかも重要なポイントです。例えば、インドでは、食料品店による生活必需品の即日配達を行うサービスの購入量が増加しています。Grofers、FlipKart、BigBasketなどの現地の小売大手企業は、商品の需要に合わせたオンラインでの配送プロセスを迅速化するために、現地にフルフィルメントセンター(物流拠点)を設立しました。
他にも、高品質な生鮮食品や食材の供給に特化したオンラインショップを運営する中国の MissFresh は、大手IT企業の Tencent と提携し、オンラインでのプレゼンスが弱い現地のベンダーとの企業間電子商取引や小売のクラウド化への取り組みを強化しています。さらに、フィリピンの食料品チェーンPuregoldのモバイルアプリ開発や、東南アジア大手のGrab、Lazadaの食料品配送サービスへの進出など、アジアの他の国々でも同様のデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが行われています。
e-グロサリーの展望
スーパーマーケットのオンライン化は、パンデミックによる一時的なライフスタイルの変化に起因するところが大きいと考えられますが、こうした新しいライフスタイルは長期的に継続する可能性も高いと思われます。パンデミックの状況下でスーパーマーケットの商品をオンラインで購入することが可能であることを示せたことは、利便性、アクセス性、安全性などの様々な観点から、コロナ後も魅力的な手段だと言えます。
そのため、この分野の将来において、さらなる投資やビジネスチャンスを育む機会があります。例えば、フィリピンでは、SM Supermarket、Robinsons、Puregoldなどの小売大手の競合企業が存在するにもかかわらず、2020年6月に新しい食料品企業のMerryMartが上場しました。
さらに、スーパーマーケットのデジタル化は、経済的な利益貢献をももたらします。当社が行った調査によると、サウジアラビアの電子商取引の活性化にネットスーパー事業が大きな役割を果たしたというデータがあります。サウジアラビアのオンライングローサリー企業であるNoon社は、マイクロフルフィルメントセンターとして機能する物流倉庫であるダークストア(即配ネットスーパー)を設立すると発表しました。ダークストアは、配送コストの削減とオペレーションの最適化を実現し、在庫や注文の管理の改善だけでなく、国全体のサプライチェーンを長期的に改善することができます。
アジア各地のスーパーマーケットのデジタルトランスフォーメーションは、消費者にとっても小売業者にとっても有益なものです。ネットスーパーに多くの利点があることを考えると、パンデミック後の世界でこれらのプラットフォームが繁栄し続けることが期待されています。
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