小売業界の状況は、この一年間で大きく変化しました。消費者は商品を購入する際、利便性と適正価格に加えて、新型コロナウイルスへの感染リスクや世界各地で起きているロックダウンによる安全性を求めるようになりました。そのため、小売企業は、消費者のライフスタイルの変化に応じた新しい販売方法を見つけなければならなくなっています。中国のアリババがeコマースで先鞭をつけたように、またしても中国が、新しいトレンドで世界の小売業界をリードしようとしています。
フォーブス誌によると、ライブコマースとは、ブランドアンバサダーやインフルエンサーがホストを務めるライブストリーミング配信を通じて、商品やサービスを販売することです。情報コマーシャルともバラエティ番組とも言われる中国のライブコマースは、中国国内で4億3,000万人以上の人が定期的に視聴していると言われています。かつては限定的な領域だけで盛り上がっているトレンド程度に捉えられていましたが、今では大企業から中小企業まで、広くライブコマースの魅力が認識され、不安定なコロナ時代で利益を生み出すために幅広く利用されています。
ライブストリーミングショッピングの出現
新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、ライブストリーミング配信は世界的な人気が急増していますが、中国ではコロナが流行する以前からこの販売方法が浸透していました。調査プラットフォーム「eMarketer」によると、ライブコマースは、中国のハイテク大手アリババの通販サイト上で、独身の日(11月11日)の大規模セールイベントにて「See Now, Buy Now」という動画機能を導入しているとおり、2017年の時点ですでに普及していたと述べられています。現在、中国におけるライブコマースの80%以上を、アリババの「Taobao Live」が占めています。
2020年初頭には、中国の小売ブランドの大半がライブストリーミングを利用しており、フォーブス誌によると、昨年の独身の日のセールでは、タオバオで販売しているブランドの約80%がライブストリーミングによるショッピングイベントを開催しています。また、2019年には、中国の高級デパートIntimeが、売上拡大のために販売員にライブストリームによるeコマースイベントを行うトレーニングの導入を始め、それにより同店の従業員は1回のライブコマースで1週間分もの売り上げを上げるほどの効果も出ています。
また、中小企業にも大きなチャンスが訪れました。都市部の人々が外出を控えて自宅に閉じこもる中、農村部の事業主は、自然をテーマにゆったりとしたライブストリーミングを行い、都市部の人々に農家から直接農産物を購入してもらうといった形でライブコマースを上手に活用しています。Bloomberg Asiaが報じた記事によると、「Brother Pomegranate」というハンドルネームで知られる果物農家のJin Guowei氏は、2020年にライブストリーミングだけで3億元(約4,600万米ドル)以上を売り上げたという事例もあります。中国でのライブストリームトレンドにおけるビジネスチャンス
ライブコマースは、今や非常に有用な販売方法となっており、2020年の中国における電子商取引市場全体の11%を占めています。Women's Wear Daily誌は、2022年までに中国のeコマース全体の売上の20%をライブコマースが占めるようになると予測しています。このトレンドは一過性ではないため、潜在的な投資家はこの急成長市場に参入するまたとない機会を得ています。
また、中小企業は、自社の商品を迅速かつ安全に消費者に届けるための信頼できる物流パートナーを求めています。現在、多くの中小企業は、JD LogisticsやCainiaoなどの伝統的な物流業者に依存しており、配送方法を改善する革新的な新しい物流業者を探している状況です。
より多くのブランドやプラットフォームが独自のライブストリーミング配信を導入するにつれ、より高品質な映像と魅力的なホストで消費者を楽しませるためにも制作価値がさらに重要になってきます。そのためには、映像やイベント制作の分野での協力者や、技術的なソリューションが必要不可欠となっています。