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本稿では、中国におけるオンライン人材紹介市場の歴史を踏まえ、市場の構造と各社の動向を考察した。中国オンライン人材紹介市場では、上場した大手4社へユーザが集中し多様なサービスを提供しているのに対して、その他中小企業はニッチな分野に特化している。大手4社が寡占化を進める一方で、人材紹介市場の裾野の広さを背景にした拡大余地が多分に残されていることを背景に、今後も多くの新規参入が発生することが考えられる。
中国人材紹介業界を概観すると、人材紹介企業の取り扱う業界が総合系から領域特化系に、また求職者ならびに求人企業とコミュニケーションするチャネルがオフラインからオンラインに移行している傾向がある。
2015年頃から、本格的なスマートフォン・ネイティブのアプリが主流となり、加えて人工知能やビッグデータなどの技術が オンライン人材紹介に応用され始めることで、企業に相応しい人材を自動的に推薦し、採用効率を向上させる工夫が差別化要素となり始めた。このような大きなトレンドの中で、業界や人材要件に関してニッチな特化型サービスが徐々に現れたが、それまでに成長した大手3社の智联招聘、前程无忧と猎聘が特化型サービスを運営する企業に出資するなどして事業を多角化、業界の寡占を進めていった。2018年以降、 採用プロセスのオンライン化はさらに加速し、ライブ説明会・ビデオインタビュー・オンラインジョブフェアなど多様な機能が開発された。人材紹介に対する利便性・効率性の追求は現在もなお続いている。
大手3社(智联招聘、前程无忧と猎聘)と、同じく上場している中国のオンライン人材紹介サービス提供者であるBOSS直聘を加えて大手4社は、それぞれ類似の事業戦略を選択している一方で、その他の中小企業は、それら大手4社とは異なる事業戦略を立てている。
これらの中小企業は、大手とは直接競合しないニッチな戦略を適用しており、特定事業領域における求職者人材アセットもしくは求人企業アセットを保有することが差別化の基本戦略となる。このようにニッチな戦略を軸に、大手との差別化を図った中小企業の新規参入が今後益々増えていくことが予測される。
Author
太田 裕一
中国・上海を拠点とするパートナー。日本企業ならびに中国企業を中心に、経営コンサルティング支援とM&A領域支援を提供してきた実績を有する。経営コンサルティング領域では、事業戦略策定、市場参入戦略策定、市場競合調査、プロセス改善、組織最適化などの多様な支援を実施。