YCP Solidianceは、横浜銀行・西村あさひ法律事務所との共催で「~ベトナムM&Aオンラインセミナー~ベトナム投資法改正にともなう実務上のインパクトと注目を浴びる業界最新情報」を実施しました。当社の東南アジアディレクター・松家優香子がモデレーター兼講師を、西村あさひ法律事務所から廣澤太郎氏、平松哲氏、武藤司郎氏が講師を務めました。当セミナーでは、新型コロナウイルスの影響から現地での情報収集が以前のように進められない企業が多いなか、ベトナムでのM&Aを検討している日本企業に向け、より具体的・実践的な情報をご提供しました。
ベトナムのヘルスケア最前線
ベトナムの医療システムは公的医療機関に大きく依存しており、病院の89%が公立です。しかし、人員不足や病院の自立政策を受けて、民間病院の参入や公立病院の民間化、デジタライゼーションが進みつつあります。また、公立病院に対する優位性を高めるため、民間病院もデジタル化をさらに強化しています。同国のヘルスケア分野のM&Aでは、2017年以降、民間病院への投資が増加しています。
ベトナム政府は、デジタル化によって医療システムのコスト削減と効率化が進むことを期待しています。保健省は最先端の技術を活用して医療サービスを高度化する「スマートヘルスケアシステム」を促進するため、電子カルテの大規模データベースや病院運営システム、電子健康統計システムといった政策を打ち出しました。
また、利用者側の意識も変化しています。従来は公立病院に患者が集中していましたが、人口動態や疫学的特性の変化、治療や予防に対する意識や知識の向上などにより、より多くの医療サービスをより高い質で提供することへの需要が大幅に増加しています。
昨今、①資源と資金の制約 ②管理の複雑さ ③データの相互接続性の3点がデジタル化の障壁となっています。しかし、新型コロナウイルスの影響で、ワクチンの接種記録を取り扱う健康管理記録システムの導入が進んだり、予約アプリの利用者が増えたりとニーズが高まっているため、デジタル化の導入は加速すると見られます。
Source: YCP Solidiance’s Research and Analysis
変化する小売・卸業界
小売・卸業界でも、従来から生じていた変化が新型コロナウイルスの影響で加速しています。消費行動の変化、外資の流入、主要プレイヤーの統合・再編を背景に、ベトナムの近代的小売店市場は2015年以降拡大を続け、スーパーマーケット、コンビニエンスストアが牽引してきました。
2015年~2016年にかけては、外資企業による大型M&Aが活発化し、先行していた欧米資本の大手小売企業がタイ資本の傘下に入りました。これに対し、2018年以降はベトナム資本のVinGroupが小売市場のM&Aを牽引しています。
VinGroupは不動産業から製造業へ舵を切り、食品サプライチェーンの垂直統合を進めていた食品大手メーカーのMasanに、農業事業と小売事業(VinCommerceとVinEco)を売却しました。近年は、AIや電気自動車をキーワードに、モビリティ事業に注力しつつあります。
Masan Groupは、祖業の食品加工に始まり、銀行、鉱業、飲料、飼料、畜産飼料、食肉加工、小売へと、積極的なM&Aにより事業を拡大。節目で海外からの投資を受けており、直近ではアリババがグループの小売事業に出資しています。
また、Telioが先行していたB2BのECプラットフォーム事業にもVinGroupが参入。伝統的な小売業者にもデジタライゼーションの波が及んでいます。
同市場におけるデジタライゼーション・オムニチャネル化は、新型コロナウイルスの影響も受けて急速に加速する可能性が高く、今後、ラストマイルデリバリーやコールドチェーンのニーズがさらに高まることが予測されます。 Source: YCP Solidiance’s Research and Analysis