タイでは現在、高齢化による健康問題の複雑化や医療費の高騰に直面しており、そのギャップを埋め、生活の質を向上させるために公立病院への期待とプレッシャーが高まっている状況です。一方で、患者数は増加し医療従事者の過労が深刻化している中、システム全体の有効性を高め、現場の負担を軽減することも喫緊の課題となっています。
YCP Solidianceのホワイトペーパー「タイにおけるスマートホスピタルの将来性」では、デジタル技術を活用した相互接続と自動化ソリューションを特徴とする「スマート」ホスピタルを、ヘルスケアの未来像であり、タイの複雑な医療課題に対するソリューションの一つであるとしています。タイでは総病床数の約80%を公立病院に依存しており、公立病院の負担が大きいことから、効率化のためにデジタル化が不可欠となっています。
スマートテクノロジーをシステムに組み込むことに成功した公立病院の例として、サムットプラカーン病院が挙げられます。同病院は600床の規模で、250万人のタイ人に国民皆保険で対応しています。
サムットプラカーン病院の例
同病院では、関係者が改善すべき点を客観的に評価できる「3P戦略」を用いて「スマート化」を開始しました。
· 人材(People):デジタル技術に適応するための新しいプロセスの作成に全スタッフを参加させることで、組織と人材管理を改善する。
· 工程(Process):ヘルスケア、テクノロジー関連のスタートアップ企業の指導を受け、受付の流れを再設計する。
· 設計(Program):設備を無駄なく活用して、作業工程の効率化と合理化を図る。
これらの3本の柱を中心に「スマート」なプロセスを構築することで、効率的で目的に適ったテクノロジーを導入することができ、同病院に大きな効果がもたらされました。また、Blockchain、Next Gov、Clicknic、AISなど、デジタル技術を提供する企業とパートナーシップを結び、病院が抱える課題への解決策を導き出しました。
· 記録の同期:同病院の250万人以上の患者のうち120万人はすでに退職している年齢層なので、記録が古くなっていたり、異なる医療施設やプロバイダーに分散していたりするケースが少なくありません。この問題を解決するために、サムットプラカーン病院は、県内のすべての病院からアクセスできる電子カルテ「Blockchain」を利用しました。患者の情報はクラウド上に安全に保管されていますが、医療従事者は保護されている情報に手軽にアクセスすることができます。
· 過剰な業務量: この病院では、1日に外来患者3,200名、入院患者615名の流れを管理しなければならず、過労が原因で医療水準の低下を招く恐れがありました。これに対して、自動受付機、AIチャットボット、自動精算機などのテクノロジーを駆使したソリューションを活用することで、混雑を解消し、医療スタッフがより重要な業務に集中することができるようになりました。
· 患者の移動: 遠方に住む患者にとっては、予約や手続きのために病院に行くことが難しい場合があります。そこで同病院では、遠隔医療サービスや医薬品の配送を導入するこことで、移動の負担を軽減し、病院での待ち時間も削減しました。
公立病院が直面する様々な課題は、デジタル技術を浸透させる機会でもあります。サムットプラカーン病院のように、「よりスマートな」病院を作ることは、タイの医療の質を向上させるために不可欠であり、ベンダーやその他の企業にとっても医療機関と連携する絶好の機会となります。
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