フィリピンはデジタル革命を迎えています。世界銀行によると、6,700万人のフィリピン人がインターネットを利用しており、1日平均3時間57分をソーシャルメディアに割いているとのことです。また、国内の電子商取引プラットフォームも成長しており、2018年の総売上高は427億PHPに上っています。
このデジタルブームの中で、金融テクノロジーの重要性が高まっています。電子マネー(同国の中央銀行はこれを「電子口座にデジタル保存された不換紙幣」と定義しています)は、ここ数年で着実な成長を遂げており、2014年から2018年までの間に年率8%の増加を記録しています。この数字は、新型コロナウイルスの流行によってキャッシュレス取引の導入が強いられることで、さらに増加すると予測されています。
この変化に伴い、Bangko Sentral ng Pilipinas(BSP)は、国内の非銀行利用者層の金融包摂に向けた原動力として電子マネーを提唱しています。この動きについて、YCP Solidianceのホワイトペーパー「フィリピンのデジタルウォレット化:フィリピンにおける電子マネーの出現」では、フィリピンで最も人気のある2つの電子マネープラットフォームの将来性と併せて考察しています。
デジタル化による銀行の業務改革
銀行業務のデジタル化は、フィリピンの新興フィンテック市場の先行プレイヤーたちにとって成功戦略と言えます。現在、フィリピンの銀行上位10行のうち9行が、モバイルアプリやインターネットバンキングのプラットフォームを完備しています。また、CIMBやINGなどのネット銀行は、高金利の預金口座によって、従来の実店舗型銀行に代わる選択肢として注目されています。
国内の大手銀行は、オンライン取引を促進するだけでなく、従来のクレジットカードに代わるものとして、プリペイドカードの利用を促進しています。プリペイドカードの取引量では国内の大手銀行であるRCBCとBDOが首位に立っており、他のプレイヤーもそれに劣らず活躍しています。
モバイルウォレットの普及
プリペイドカードの人気が高まっているとはいえ、フィリピンのフィンテックの成長はモバイルウォレットが牽引しています。インターネットバンキングと同様に、最初に市場に参入することが、この分野でリーダーシップを取ることに繋がります。GCash、PayMaya、Coins.phの3社は、早くから電子マネーを導入し、大規模な投資家から強力な支援を受けていることで、市場のリーダーとなっています。中でも2012年に市場に参入したGCashは様々な点で同国の電子マネーの先駆者となっており、Ant Financialの投資を受けて、製品の使いやすさと効率性を伝える強力なマーケティングキャンペーンを展開しています。
モバイルウォレットの競争環境は、市場シェアを獲得しようとする他の企業によって拡大しつづけています。人気の高いライドハイリングアプリのキャッシュレス機能から派生したGrabPayも、新しい機能を追加して拡大しており、その他の小規模企業もフィリピン人に新しい選択肢を提供しようと準備を進めています。
デジタルウォレット成長のチャンス
フィリピンのデジタルウォレット化は、今後も着実に成長していくと思われます。2021年には、電子マネーを介して3,700億PHP以上の取引が行われ、ウォレットの流入額は7,000億PHP近くに達すると予測されています。
また、BSPが推進する金融包摂では、より多くのフィリピン人をデジタルウォレットのエコシステムに参加させるための新たな協力者を見つけることで、この分野でのビジネスチャンスを拡大しています。急速に変化するデジタル社会では、より多くの機会が生まれます――従来の銀行はサービスを向上させる必要に迫られ、モバイルウォレットは従来の取引だけでなく機能を強化することで競争を激化させています。
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