インドネシアおよびオーストラリア政府は、両国間の貿易関係を強化することを目的として、今年初めに自由貿易協定であるインドネシア・オーストラリア包括的経済連携協定(IA-CEPA)に署名しました。この協定に関して、オーストラリア企業はインドネシアでのビジネスの成長が見込めるとして楽観的な見方を示していますが、協定は両国において批准される必要があります。

インドネシアは、オーストラリアにとって地理的にも近接した魅力的な市場といえます。さらに、インドネシアは2030年までに世界第5位の経済大国になると予測されており、この自由貿易協定は、成長著しいインドネシアとの経済協力関係と市場シェアの強化をオーストラリアに保証するものです。

期待される食肉と家畜の輸出拡大

インドネシアは現在、オーストラリアにとって生体牛の最大の輸出市場であり、オーストラリア産の牛肉輸出先としては5番目に大きな市場です。同国はアジアで最大の牛肉消費市場の1つであるとみられており、2022年までに総消費量は9%増加すると予測されています。2017年、オーストラリアは50万頭以上の生体牛をインドネシアに輸出しました。

そうした状況下においても、政府はインドネシアの食肉産業および畜産業に積極的に介入し、厳しく規制しています。最近の生体牛の輸入規制では、民間企業が家畜を輸入する際にはその20%が繁殖牛である必要があり、畜産農家は繁殖プログラムに取り組むよう求められます。

新しい自由貿易協定により、ASEAN・オーストラリア・ニュージーランド自由貿易地域(AANZFTA)にリスト化されていない牛肉および生体牛の製品ラインに関して、即時または段階的に、関税引き下げが実施されることになります。さらに、IA-CEPAは、より自由な取引を実現するために、政府による生体牛の輸出規制を緩和するものとみられています。

オーストラリアの中小企業にとっての新たな市場

インドネシアは、その市場規模の大きさから、特定の地域や市場への依存を減らし、多様化を試みるオーストラリアの中小企業にとっては、潜在的な市場となる可能性があります。オーストラリアの中小企業は現在、インド(15%)やドイツ(15%)などの新しく魅力的な市場や、香港(12%)、インドネシア(14%)、韓国(17%)、シンガポール(18%)などの北アジアおよび東南アジア内の複数の市場に注目しています。一方で、現在オーストラリアにとって最大の市場は、ニュージーランド(34%)、中国(28%)、米国(24%)です。オーストラリアの中小企業は現在、FTAに基づく関税引き下げにより、コストを削減しながらインドネシア市場に投資することが可能となっています。インドネシア政府もまた、中小企業が法令を進んで遵守し、事業を開始できるよう、新規事業の設立を奨励しています。

小麦

小麦は約40%の市場シェアを占め、オーストラリアにとっては、インドネシアへの単一で最大の農産物の輸出品です。インドネシアはオーストラリアの小麦輸出量の4分の1にあたる12億米ドル、量にして420万トンを輸入しています。 IA-CEPAにより、オーストラリアの飼料穀物がインドネシア市場へと浸透することになり、カナダ、ウクライナ、米国などの競合国に対して、合計36億米ドルにあたる輸入小麦の市場シェアの獲得が可能となります。

製造業

オーストラリアの製造業者は、この自由貿易協定の好機を活用し、製造拠点をインドネシアに移し、最終製品をオーストラリアへと持ち込むことも検討すべきといえます。インドネシアはオーストラリアに比べて、労働コストが低いためです。インドネシアは、東南アジア最大の工業生産拠点の1つであるため、オーストラリア企業に対して製造能力を提供しています。さらに、インドネシアの中央統計庁(BPS)によると、同国において製造業は2018年の国内総生産の20%を占め、最も大きな貢献を示している産業です。

機会を捉える

両国が補完性を拡大し、パートナーとして共に成功するための方法を模索することにより、IA-CEPAは、貿易の効果を最大化させるためにも、従来の貿易協定よりもさらに踏み込んだ協定となる必要があります。そのため、この協定に基づく経済的パートナーシップは、要約すると以下の内容を含むことが望ましいといえます:

国境を越えた一貫生産体制と、国内市場とAEC、英国、EU、および中国などの第三国市場の両方での供給において、単一国家では実現不可能な、各国の比較優位性を適用した物品およびサービスのバリューチェーンを開発する。双方向の投資関係を構築し、インドネシアへのオーストラリアの投資を後押しするとともに、オーストラリアへのインドネシアの長期投資を強化する。これは、競争市場を発展させ、リスクを軽減し、投資機会を促進し、障壁を下げ、合弁事業によって達成されるべき内容です。

基準と規制を調整することで、知識と技術のより広範な共有を実現する。資格の認定。合弁事業と事業許可の促進。トレーニングと専門能力開発の協力。知的財産権の認識。教育の推進。紛争解決メカニズムの確立、およびインドネシアとオーストラリア間の熟練労働者の移動の奨励。

強化された正式な教育とトレーニング、技術移転、オンザジョブラーニング(OJL)、専門能力開発、および国際サービス企業の存在から流れる知識「スピルオーバー」を通じたサービス部門への投資とキャパシティ・ビルディングの直接的な関連性を認識する。

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