不動産管理を手掛けるColliers Philippines社は、2023年1月に公開したレポート内で、ショッピングモールへの来店者数が新型コロナウイルス流行前の約90%まで回復していることから、小売業界で今後収益増加が見込めるとしています。

業界内でさまざまな分野が好調となることが予想されますが、同レポートでショッピングモールにおける小売事業者の50%を占めると推定されている飲食領域は、特に有利な立場にあると考えられます。

フィリピン飲食産業の現状

フィリピンの飲食産業は、小規模な家族経営のフードスタンドやレストランから、大規模な多国籍食品・飲料会社まで、さまざまな規模の事業者で構成されています。また、包装食品や加工食品の製造、ファストフードチェーンやフルサービスレストランの運営、各種飲料の製造・販売など、事業内容も多岐にわたります。

Euromonitor International社のデータによると、飲食業界は近年、新型コロナウイルス流行による影響を受けながらも前年比成長率を維持しており、飲食料品小売店の総売上高は、2020年時点で237.5億米ドル、2021年は243.6億米ドルとされています。飲食料品市場の成長にはさまざまな要因がありますが、中でも人口増加、中・上流階級の可処分所得増加、業界全体のデジタル化による影響が大きいと考えられます。これらの成長要因は、飲食産業が継続的に発展していくために、公共部門・民間部門の双方において重要な役割を果たすことが予想されます。

飲食業界は今後さらに発展していく見込みですが、一方で、事業者数の多さによる競争激化、コスト上昇、スケールアップの難しさ、零細・中小企業(MSME)におけるデジタル化導入の遅れといった課題も想定しておく必要があります。こうした課題の解消に向けて、飲食領域参入を図る国内外のプレーヤーに投資機会が生じています。

飲食ビジネスに関する投資機会
フィリピンの飲食業とその関連分野は多岐にわたり、有望な投資機会が豊富に存在します。

その一例が、中小企業のスケールアップと事業拡大を目的とした投資です。中小企業は銀行融資や政府支援を受けにくいため、投資家による経済的バックアップを求める傾向があります。中小企業は投資を受けることで、短期的には、業務効率や製品全体の品質向上といったメリットを得ることができます。また長期的には、フランチャイズやFMCG(Fast-Moving Consumer Goods)など、より好条件で大規模なビジネスチャンスを模索することが可能になります。

加工や流通、コールドチェーンソリューションなど、飲食領域に深く関わるロジスティクス分野も投資家の関心を集めています。飲食産業の成長ペースを維持するためには、ロジスティクス分野への積極的な投資が不可欠です。飲食領域のロジスティクスに関する投資機会としては、以下の分野が挙げられます。

  • 食品加工:フィリピンではトロピカルフルーツ、野菜、海産物、畜産物の生産が盛んであり、飲食事業者は加工能力を強化するためのパートナーシップに積極的です。またこれに付随して、工場や加工場の増設、労働力不足への対応、革新的な技術導入による業務効率化などが必要とされる可能性があります。
  • 食品流通:飲食産業は従来のサプライチェーン内でも成長を続けてきましたが、体系化されていない部分に改善の余地があります。具体的には、生産者から小売事業者、消費者までを結ぶ、より包括的なサプライチェーンの構築が考えられます。エンドツーエンドのサービス実現に向けた「Farm to Table」推進や市場のデジタル化といった革新的なソリューションに対して投資を検討することが可能です。
  • コールドチェーンソリューション:コールドチェーンのロジスティクスには、頻発する停電や貯蔵能力不足など、多くの課題が残されています。そのため、冷蔵輸送、機器販売、食品保存設備のリースやレンタルといったソリューションによるコールドチェーンの改善に投資機会が生じています。また、コールドチェーンロジスティクスに特化した人材育成などの専門的なサービスによる市場参入も検討可能です。

企業経営者や投資家は、今後想定される課題と成長機会を正確に把握した上で、慎重に検討を進める必要があります。飲食産業はフィリピン経済に対する影響が大きく、豊富なビジネスチャンスを生み出しているため、今後も継続的な成長が期待されます。

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