タイの医療システムには大きな負荷がかかっています。新型コロナウイルスの感染者数は依然として減少せず、ワクチンの接種も遅れているため、政府はその課題に対処するために資金投入を進めています。Bangkok Post紙によると、タイの首相は、5,200万人の国民を対象とする公衆衛生部門を支援するために、より多くの資金を確保することの重要性を表明しました。

 

しかし、公的医療制度の課題は新型コロナウイルスだけではありません。高齢化が進むタイでは、健康問題の複雑化に直面しており、深刻な人材不足も相まって、コストが急増しています。同国の医療問題を解決するために様々なソリューションが提案されていますが、中でも公的医療機関で最も普及し、費用対効果の高さが実証されているのが、デジタル化の促進です。

 

デジタルトランスフォーメーションについては、YCP Solidianceのホワイトペーパー「タイにおけるスマートホスピタルの未来」で、タイの病院がデジタル技術を活用してスマート化を進め、ヘルスケアシステム全体の有効性を向上させた様々な方法をご紹介しています。

 

AIを活用したヘルスケアソリューション

医療機関が導入している様々な技術的ソリューションには、プロセスの自動化、待ち時間の解消、ヘルスケア教育の改善に向けた取り組みなどがあります。Bangkok Post紙は、新型コロナウイルスに関するフェイクニュースに対抗し、ネットユーザーに正確な健康情報を提供することを目的とした、新しいAI搭載のチャットボット「Chat Sure」のローンチを報じました。このチャットボットは、保健省、タイ健康促進財団(THP)、Facebook ThailandHbot CoInternational Health Policy ProgramNational Vaccine Instituteの共同プロジェクトで、20216月初旬に提供が開始されました。

 

AI技術は、パンデミック以前からタイの病院で広く取り入れられているデジタルソリューションです。大規模な公的医療機関であるサムットプラカーン病院では、AIチャットボットを使って患者の一次診断を行っています(1日平均3,200人の外来患者が来院)。別の公立病院、ソンクラーナカリン病院でも同様に、AI技術を利用して患者の待ち時間を予測するシステムを採用し、人手がかからないようにしています。

 

AI技術の進歩は、医療スタッフを感染リスクにさらすことなく新型コロナウイルスの患者を診察するのにも一役買っています。20204月、OpenGov Asiaは、タイのデジタル経済社会省と技術系大手企業のHuaweiが提携し、シリラジ公立病院にAIソリューションと5G技術を提供することを発表しました。

 

中国の20以上の病院で導入されているこれらのソリューションは、人工知能を用いてコンピュータビジョンや医療画像解析を行い、疑いのある患者の肺の状態を評価するものです。この技術は、医療の質を向上させるだけでなく、患者の安全を確保し、患者の増加による医療関係者への過重な負担を軽減することにも繋がります。

 

AIソリューションの可能性

事業会社やスタートアップ、テクノロジー企業等のステークホルダーには、病院が抱える問題を解決するための独創的なソリューションを生み出す可能性が豊富にあります。前述のソリューション以外に、AI技術を放射線治療やCTスキャンに役立てている病院もあります。また、人工知能はセキュリティにも役立ちます。多くの私立病院では、顔認識機能によってVIPの顧客体験を向上させるために、このテクノロジーを活用しています。

 

タイの病院におけるその他のデジタル技術の導入方法や、パートナー候補へのビジネスチャンスについては、こちらからレポートをダウンロードしてご覧ください。

 

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