国際通貨基金(IMF)の報告によると、タイの国内総生産(GDP)は2020年に6.1%減少しました。IMFのデータによると、タイの経済は、新型コロナウイルスの影響を受けたものの回復傾向にあり、2021年のGDPは2.6%増加すると予測されています。
タイでは観光産業が総GDPと全国の雇用の20%を占めているため、旅行の規制が緩和されれば、経済は回復すると考えられます。新型コロナウイルスの第三波が懸念される中ですが、現地では、農業や米の生産という意外な切り口から観光業を活性化させる計画を推進しています。
干ばつからの復興
「Nikkei Asia」や「Bloomberg」の記事によると、タイではこの2年間、干ばつの影響で米の生産量が伸び悩んでいました。天候不順による米の生産量の減少に加え、輸送コストの高騰や競争の激化により、タイの米の輸出量は20年ぶりに減少しました。
タイにおける米の生産量は、昨今非常に苦戦しているものの、今後は増加することが見込まれています。米国農務省(USDA)は、好天に恵まれ、十分な水の供給が続くという予測条件の下では、2021年から2022年の収穫年度にかけての総生産量は、2020年から17%増の2,100万トンに上ると予測しています。
有機農業観光による繋がり
観光と米生産の活性化に関して、Thai Organic Consumer Association (TOCA)は、タイ国政府観光庁 (TAT)と協力して、消費者とタイの有機栽培農家のネットワークを繋ぐプラットフォームの立ち上げを進めています。これにより、現地の人々や旅行者が、ホテルやレストラン、市場など、有機米を購入したり食べたりできる場所を直接調べることができるようになります。
こうしたネットワークを構築することで、有機農場が観光地になる可能性も出てきます。これによって、観光客は本物のタイ文化を体験することができ、タイの地域経済の回復にも繋がります。現在、TOCAの有機農業の拠点はナコンパトムのサンプラン地区にありますが、このプロジェクトでは、タイの各地に新たな拠点を設けることを目指しています。
「Web in Travel」の記事によると、TOCAはTATの支援を受けているほか、タイ国家イノベーション庁からの助成金という形で政府の支援も受けています。現在、TOCAのネットワークは200家族、4,000名の登録者で構成されていますが、今回の経済支援により、さらに拡大することを目指しています。また、地元の人々だけでなく、最終的には観光客も巻き込み、農業と観光の両方にメリットのあるプラットフォームにしていくことを目標としています。
都市農場の出現
タイ国内で観光と米の生産に重点が置かれるなか、新型コロナウイルスの問題を解決するために米の生産に着目した現地の団体があります。「Bangkok Post」の記事によると、Thai Health Foundation(ThaiHealth)は、荒地を農業用地に変えるプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた低所得者層を対象としています。具体的には、バンコク、パトムタニ、サムットプラカーン、チョンブリ、ノンタブリーの30のハイリスク地域が対象です。
都市農場のコンセプトを導入し、コミュニティに適切な農法を指導することで、困難にある地域の人々が、健康に良い食品を安定的に入手できるようになります。このプロジェクトの成果は、個人の健康だけでなく、低迷するタイの経済にも貢献しています。ThaiHealthが成功することで、今後タイ国内で同様のプロジェクトが後に続く可能性もあります。
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