2022年、シンガポールの企業や専門家はどのような事業機会に期待できるでしょうか。YCP Solidianceは、シンガポールの最新ビジネストレンドについて、同国のプロフェッショナルチームによる調査・分析に基づいた詳細なインサイト記事を数回にわたって公開しています。
第4回目は、シンガポールの持続可能性向上へ向けた取り組みと、2022年に向けて企業が担う役割について解説します。当シリーズの他の記事を読むには、こちらからニュースレターをご購読ください。
東南アジアでは、急激な都市化の進展により、環境問題が顕在化しています。これに対処するため、近年、ASEAN全体でさまざまな分野(エネルギー、食糧、テクノロジーなど)における持続可能性への関心が高まっています。
シンガポールでは、「グリーンプラン2030」政策の実施に見られるように、環境の持続可能性に対する意識に前向きな変化が生じています。そのため、2022年のビジネスもこれまでと同様に、持続可能性というトレンドに大きく影響されることが予想されます。
グリーンプラン2030の達成に向けて
2021年2月に発表された「グリーンプラン2030」は、シンガポールが持続可能な開発を国家として推進することを目的とした戦略的枠組みです。国連の「持続可能な開発目標」と「パリ協定」に沿って、この政策も「自然の中の都市」「クリーンエネルギーの活用」「グリーン経済」「レジリエントな未来」「持続可能な生活」の5つの柱を指針としています。
グリーンプラン2030の成功には、教育やガバナンスなど、さまざまな分野の発展が不可欠です。たとえば、テクノロジー産業は、持続可能な開発に繋がる新しい技術や手法の研究開発を促進する必要があります。2019年にシンガポールが開発した、下水処理水を再利用した水、NEWaterがその一例です。
さらなる投資とESGの規制
持続可能な開発を推進するため、シンガポールは企業の持続的な成長の促進を目的としたいくつかの取り組みを開始しました。中でも、国内企業(特に中小企業)のグリーン経済におけるケイパビリティ向上を支援することを目的とした「Enterprise Sustainability Programme」には1億3,000万ドルを拠出しています。ESPは、ワークショップや融資などを通じて今後4年間で約6,000の企業を支援する見込みです。
シンガポールは企業に対して持続可能性の向上に注力することを求めつづけているため、ステークホルダーにとっては事業機会が拡大している状況です。シンガポールで持続可能な開発を推進することは、社会全体に利益をもたらすだけでなく、企業が先進的な地位を得ることにも繋がります。政府がグリーンプラン2030やその他の関連施策の実施に投資を続けていることを考えると、持続可能性は官民の両方にとって、今後も大きなトレンドとなることが予想されます。