サウジアラビア政府は近頃、ビジョン 2030 で定められた目標を達成するために、成長を続ける同国の輸送・物流業界に外国投資を呼び込むことに改めて関心を示しました。
Air Cargo Newsの記事によると、米国の物流大手FedExが今後10年間でサウジアラビアの物流事業に約4億米ドルを投資すると発表したことによって、他の外国企業も同国の物流業界への投資に注目しはじめました。サウジアラビアは立地条件が優れているため、外国企業と現地企業の双方から、サプライチェーンと物流プロセスの中核に位置付けられています。
最終的には、外国投資の増加や、サウジアラビアの立地条件を企業が継続的に活用することで、サウジアラビアの物流業界全体が飛躍的な利益を得ることになると考えられます。
物流ハブとしてのサウジアラビア
当社YCP Solidianceのホワイトペーパー「サウジアラビアを中東の物流大国へ」では、同国の物流産業の急速な発展がいくつかの統計によって示されています。サウジアラビアの物流市場は276億米ドルであり、中東・北アフリカ(MENA)地域内で最も高い数字となっています。さらに、新型コロナウイルスの流行による物流需要の拡大により、物流業界は14.87%の成長率を記録しています。
サウジアラビアは施設運営における人工知能(AI)の活用や倉庫物流におけるロボットの活用など、デジタルソリューションの適用による物流インフラの改善を目指しており、業界全体を発展させるための施策を積極的に実施していることから、外国企業はこの分野への投資にさらに高い意欲を持ちはじめると予想されます。サウジアラビアの輸送・物流業界への投資は急増しており、今後数年間は同等の成長率を記録しつづけることが期待されています。
eコマースの重要な役割
サウジアラビアの物流業界の成長は様々な要因による投資の増加に起因していますが、eコマース市場の役割とその物流業務への依存も大きく関わっていると考えられます。例えば、サウジアラビアにおけるeコマース市場は2020年から2022年にかけてCAGR24%で拡大しており、これは新型コロナウイルス感染症流行前の予測よりも10%高い成長率です。さらに、市場は2025年まで拡大しつづけ、500億米ドル規模になると予想されています。ポストパンデミックの社会はデジタル空間やオンラインサービスに依存しつづけることが予想されるため、サウジアラビアのeコマース業界だけでなく、物流業界全体にも利益をもたらすと考えられます。
物流産業の価値がサウジアラビア内外の関係者に認められていることや、eコマースなどの関連産業の見通しが有望であることを踏まえると、同国はビジョン2030の実現に向けて順調に進んでいると言えます。この目標を達成することは、産業や企業という規模に留まらず、国全体や国民にも利益をもたらす重要な土台となります。
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