グリーンエネルギーの必要性は、新型コロナウイルスのパンデミックによって一層明確になりました。一例として、Global Carbon Projectの報告によると、世界の二酸化炭素排出量は、2020年に6%以上減少して2006年以来の低水準となったものの、規制を緩和して通常の生活に戻る国が増えたことで、再びパンデミック前の高い数値に戻っています。
特に東南アジア地域では、都市化が急速に進んでいるため、グリーンエネルギーの必要性に迫られています。一方で、同地域では豊富な天然資源も有しているため、グリーンエネルギーへの移行も着実に進んでいます。ベトナムやフィリピンでも、風力や水力、太陽光を利用した再生可能エネルギーの開発が進められていますが、より環境に配慮した未来のために多くの投資を行い、同地域をリードしているのはシンガポールです。
シンガポール・グリーンプラン2030
シンガポールはすでに「よりクリーンな」エネルギーミックスに投資しており、「The Straits Times」紙によると、化石燃料の中で最もクリーンな天然ガスを95%使用しています。しかし同国は、「シンガポール・グリーンプラン2030」によって、持続可能性への取り組みをさらに強化しています。
2021年2月に発表されたこの計画は、「自然の中の都市」、「エネルギーリセット」、「持続可能な生活」、「グリーン経済」、「強靭な未来」を柱に、気候変動への対策に国家的に取り組むことを目的として策定されました。
「エネルギーリセット」の項目では、天然資源が乏しいシンガポールが気候変動に対処するための、グリーンエネルギーの重要性を強調しています。この計画では、「2025年までに太陽光エネルギーの導入量を4倍にする」などの意欲的な目標が掲げられ、以下のような取り組みが実施されています。
· 住宅開発庁(HDB)の新規開発住宅へのソーラーパネル採用
· 他のASEAN諸国との連携による電力輸入
· 発電所へのコンバインドサイクル・ガスタービン等の技術導入による、二酸化炭素排出量の削減
エネルギー効率の向上は、国全体の二酸化炭素排出量の削減に繋がります。政府は、スマートLEDライトや太陽光エネルギーなどの技術の導入促進を目指しています。
太陽光エネルギーへの投資
グリーンプランは、シンガポールがグリーンエネルギーへの転換を支援するために実施している数多くの施策の一つに過ぎません。太陽光発電の分野でも、同国は大きな進歩を遂げています。2020年8月には、テンゲ貯水池で水上太陽光発電所の建設が始まり、45ヘクタールという世界最大級の規模となることが予測されています。
「The Straits Times」紙によると、この水上太陽光発電所は2021年後半に完成予定で、自動車7,000台分に相当する二酸化炭素量の削減効果が見込まれています。また、この60メガワットの大規模発電所は、HBDの住居約16,000戸の1年間分のエネルギーを供給することができます。
シンガポールでは、これらの発電所がグリーンエネルギーの目標達成の鍵になると考えています。また、シンガポール公益事業庁は、35万世帯に太陽光発電を提供するという2030年の目標を達成するために、ベドックとローワーセレターの2箇所にある小規模な水上発電所を含む、13の太陽光発電所を新たに登録しました。
より環境に配慮した未来を築くチャンス
シンガポールの財務大臣は、CNBCの記事の中で、同国がASEAN地域のグリーンファイナンスのハブとなることを目指して、新しいグリーン経済の構築に投資する計画について語りました。シンガポール政府は、より環境に配慮した持続可能なプロジェクトを推進するため、18億米ドルの資金をグリーン投資に配分し、利用・再生・持続が可能なエネルギーの提案の検討などを進めています。
シンガポールはより包括的で、利用しやすく、大規模なグリーンエネルギーの開発を推進しているため、投資家は、同国だけでなく東南アジア地域全体の持続可能性の基礎となる、よりクリーンな未来に投資するまたとない機会を得ることができます。