新型コロナウイルスの流行開始から1年が経ちますが、インドネシアでは、国内の感染者数増加への対応に苦慮しています。「Worldometer」のデータによると、2021年7月、インドネシアでは1日で54,517人が新規感染、991人が死亡し、単日の集計で過去最多となりました。これにより、インドネシアは累計感染者数が世界15位、現感染者数が世界5位となりました。
この傾向は今後も続くと見られ、インドネシアでは早急な解決策と対応が求められています。しかし同国では、新型コロナウイルスの治療物資や施設が限られていることも事実です。そこでインドネシア政府は、別の解決策として、通信技術を利用して必要な患者に医療を提供する遠隔医療に目を向けています。
デジタルベースの医療サービス
「Inquirer.Net」の報道によると、インドネシア全国の病床占有率はすでに75%に達し、ジャワ島などの人口の多い島では90%を超えているため、対策が急務となっています。また、「Thomson Reuters Foundation News」によると、現地の病院では酸素の供給が不足しており、新型コロナウイルスの治療にさらなる困難が生じています。物資が不足し、治療ニーズの高まりに病院が対応できない中、インドネシアでは遠隔医療サービスが切実に求められています。
NextcontinentがYCP Solidianceの協力を得て作成したホワイトペーパー「遠隔医療:コロナ禍を乗り越える統合型ケアのアプローチ事例」では、新型コロナウイルスを治療するためのアプローチとして、各国が遠隔医療を活用する可能性があるとしています。複雑な課題ではありますが、既存のアクセス性の高いインフラやリソースを活用した体系的なアプローチを創出することができれば、インドネシアで遠隔医療を導入することは十分に可能です。
これに関連して、インドネシア保健省は現在、民間の遠隔医療スタートアップ企業のサービスを採用しています。Aldokter、GrabHealth、Halodocなどがその例です(「Jakarta Globe」、「Healthcare IT News」より)。インドネシア政府が採用したプラットフォームでは、軽症の新型コロナウイルス患者に対して、遠隔診療、医薬品の配送、検査予約などの遠隔医療サービスを無料で提供します。
成長の可能性
今回のインドネシア政府の取り組みが国民にとって有益であることは間違いありませんが、遠隔医療の取り組みにはさらに成長の余地があります。インドネシアが新型コロナウイルスの治療に特化した遠隔医療サービスをさらに推進していくためには、ユニコーン・スタートアップ(評価額が10億ドル以上のスタートアップ企業)の役割を重視する必要があります。
2020年8月に発表されたYCP Solidianceのホワイトペーパー「インドネシアは2045年までに『100 Smart Cities』計画を達成できるか」によると、ジャカルタなどの大都市では、情報通信技術(ICT)を活用した「スマートシティ」への移行のために、eコマース企業やユニコーン・スタートアップとの提携にすでに注力しています。さらに、南アフリカのスマートシティ、エクルフレニでのeヘルスソリューションの採用例に見られるように、ユニコーン・スタートアップに重点を置くことで、長期的な遠隔医療ソリューションは大幅に実現しやすくなります。
インドネシアには現在、5社のユニコーン・スタートアップがあります。Gojek、Traveloka、Tokopedia、Bukalapak、そしてOVOです。これらの企業が積極的に国に協力、支援していることから、遠隔医療への移行は今後さらにスムーズに進むと考えられます。コラボレーションの可能性が現実的であることは、Gojekの例が証明しています。前述のHalodocと提携している同社は、現在、インドネシアの遠隔医療施策に積極的に取り組んでいます。
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