ベトナムは、新型コロナウイルスの流行を受けてロックダウンが厳重化・長期化していることで、国際的なアパレルブランドの製造拠点としての地位を失う危機に晒されています。アパレル製造工場の操業効率が低下し、NikeやGapなどのグローバルブランドが製品不足に陥ることが予想され、経済面にも影響が及ぶことが懸念されています。
しかし、他の部門の新型コロナウイルスへの対応と同様に、アパレル製造業においても、DXを推進することが、業界の様々な問題を解決する答えになると考えられます。
ベトナムのアパレルメーカーが抱えている課題
Japan Todayの記事によると、複数の国際的なアパレルブランドの生産・供給を担っているハノイ東部のHung Yen Knitting & Dyeingの工場では、生産量が50%減少したと報告されています。また、ベトナムの工場では、渡航制限による輸送手段の不足から、製造に必要な物資が届かないなどの物流面での遅れが頻発しているとのことです。
専門家は、ベトナムの製造業において、第3四半期に大きな経済的悪影響は生じないものの、差し迫ったホリデーシーズン需要のために、今後数ヶ月間にさらなる問題が発生する可能性があると予測しています。そのため、一部のブランドは注文を減らす可能性があり、ベトナムの製造業はビジネスの縮小を余儀なくされることになります。このように、短期的な障害と長期的な障害の両方が、ベトナムの製造業の成長に大きな影響を与えかねません。
デジタルで変革するアパレル産業
現在ベトナムでは、新型コロナウイルスを封じ込めるための取り組みが行われていますが、アパレル製造業については現時点でできることが少なく、将来の計画を立てるほかありません。ベトナム国内の生産工場は、特にアパレル業界における製造プロセスのデジタルトランスフォーメーションを確実に行うことの重要性を考慮する必要があります。
例えば、ナムディン省最大の繊維メーカーの一つであるBao Minh Textile JSCは、いくつかのデジタルソリューションを適用し、プロセスの自動化に成功しました。これにより、作業員の数を減らせただけでなく、生産設備を通じて関連する製造データを収集することができるようになりました。
YCP Solidianceとブラザー工業が2020年に発表したホワイトペーパー「アパレル産業のデジタルトランスフォーメーション: 工場サプライチェーンを効率化する方法」では、アパレルメーカーがデジタル技術を導入することで、生産性が5%向上し、生産にかかる時間とコストが全体で88%削減されたことが明らかになりました。従来のプロセスにデジタルソリューションを導入することで、INSパネル(タブレット/デジタルアプリケーション)による発注や事務処理の効率化、工場の生産量や生産性を正確に反映した計測記録、稼働率指標による従業員の適正な評価などのメリットが得られました。
ベトナム政府は、アパレル産業の生産プロセスをデジタル化で改善するために、国を挙げての「国家デジタルトランスフォーメーション計画」を展開しています。このプロジェクトは、2025年までに国のデジタル経済を29%成長させることを目標としており、そのために製造業を含む8つの分野でデジタルトランスフォーメーションを加速させることに重点を置いています。
アパレルや製造業に関わる政府と民間企業の両方がパンデミック期間中にデジタルトランスフォーメーションの体制を整えれば、回復への道のりは容易になります。
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