政府や産業、そして個人がテクノロジーに依存している現在、産業や経済のさらなる発展は、最先端テクノロジーをいかに使いこなすことができるかにかかっています。そして5Gネットワークの出現によるインターネット接続性の向上もまた、現在非常に注目を集めるテクノロジーとなっています。
Tech Wire Asiaが報じた、Capgemini Research Instituteが2019年に実施した調査によると、世界の産業組織の75%が5Gをデジタルトランスフォーメーションの重要な分岐点として位置付けており、65%が2021年までに5Gネットワークの導入を計画しているとしています。その後の調査では、5G導入のパイロットテストを開始している産業は30%にとどまっているとはいえ、初期段階としては高い数値となっています。
Bloombergによると、マレーシアはこの流れに沿って、民間の通信サービスに依存するのではなく、国を挙げて独自の5Gインフラを構築する計画を2021年2月に発表しました。
政府独自の5Gネットワークに対する懸念
このような高い目標を達成するために、業界関係者は多大なエネルギーを投入していますが、一方で政府が独自の5Gネットワークを構築しようとすることに懸念を示す声もあります。
GSMA Intelligenceのレポートによれば、こうした政府の動きは国内の通信事業者独自の5Gプロジェクトを弱体化させるという指摘もなされています。例えばマレーシア最大の携帯電話事業会社であるMaxis社は2019年に中国企業であるHuaweiを彼らの5Gネットワークプロバイダーとして起用したとMobile World Liveで発表しています。さらにGSMAは、4G時代にマレーシア政府が主導した単一のホールセールネットワークが、高品質なサービスと接続性を提供できなかったことを引き合いに出し、今回の5G時代においても同じ状況に陥る可能性があると指摘しています。
また、政府主導によるプライベートネットワークがマレーシア企業に対する投資誘致へどのような影響を与えるかについても懸念が指摘されています。2021年2月にBusiness Timesが報じたように、米国証券取引委員会(SEC)公認の格付け会社であるFitch solutionsは、マレーシアの通信業界のリスクスコアを100点満点中74.9点とし、従来よりも10.7ポイントの低下となりました。このように相対的に低い評価を受けたことで、マレーシア国内外の投資家が通信事業への投資を躊躇する可能性があります。
正しい方向への歩み
このような指摘がある一方で、マレーシア政府がその目標達成に向けて緊急の対策を講じていることもまた事実です。政府は、民間の5Gネットワークへの移行の一環として、国内ネットワークの監督を担う政府系特別目的団体Digital Nasional Berhad(DSB)の設立を2021年3月に発表しました。ロイター通信の記事によると、DSBは2021年7月時点で、マレーシアの5Gネットワークインフラのエンド・ツー・エンド開発を先導すべく、通信会社大手のエリクソンと契約を締結しています。エリクソンがマレーシアの5Gネットワークの供給と管理に対して全面的な責任を持つことに対して、政府は10年間で26億5,000万米ドルを投入すると報じられています。
このように5G導入への準備を進め、マレーシア政府は、2021年末までに5Gネットワークを立ち上げ、2024年までに人口3,200万人のうち80%がサービスを受けられるようにすることを目標に掲げているとCapacity誌が報じています。
5G導入への素早い対応は、マレーシアのデジタル経済のさらなる活性化にとって有益なことだと言えます。当社のホワイトペーパー「デジタルトランスフォーメーションの加速 マレーシア企業はデジタル化に対応しているのか? 」でも、マレーシアのデジタル分野は堅調な成長を遂げ、2015年から2018年までの年平均成長率(CAGR)は8%を記録したことをレポートしていますが、5Gネットワークの導入がデジタル経済に恩恵をもたらすことを考慮すると、この数字がさらに引き上げられることが期待されています。
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