2022年、ベトナムの企業や専門家はどのような事業機会に期待できるでしょうか。YCP Solidianceは、ベトナムの最新ビジネストレンドについて、ディレクターのDennis Lienによる調査・分析に基づいた詳細なインサイト記事を数回にわたって公開しています。
シリーズ第3回は、パンデミックにおけるベトナムの製造業の成長と、ポストコロナにおける発展に必要な要素について解説します。当シリーズの今後の記事については、こちらからニュースレターをご購読ください。
世界的なパンデミックが続く中、ベトナム経済は、製造業の成功と成長により堅調に回復しています。Statistaのデータでは、製造業が2021年の国内総GDPの約25%を占めました。
労働力不足や新型コロナウイルスによる工場の一時的な閉鎖など、他国と同様にサプライチェーンの問題を経験したにもかかわらず、ベトナムの製造業は迅速な回復に成功しました。2022年に向けては、この回復力が国内外でのさらなる発展に繋がることが期待されています。
鍵をにぎる労働力
中国などの製造業大国と比較すると小規模ではありますが、ベトナムの製造業が成功している要因として、競争力のある低い人件費や、低~中スキルの労働者の増加などが挙げられます。
人件費の低さについては、中国の製造業従事者の時給が6.50米ドルであるのに対し、ベトナムは2.99米ドルとほぼ半額であり、製造業にとって魅力的な国だと言えます。ベトナムは人件費が他国より比較的低く、高い費用対効果で労働力を確保できることに加え、労働人口が多いことも成長の大きな要因となっています。
2021年初頭には、新型コロナウイルスのデルタ株が流行する中で労働者が大都市の工場を離れたため、労働人口が大きく減少しましたが、最近のデータでは、景気が徐々に好転していることが明らかになっています。調査会社IHS Markitの2022年3月の業界レポートによると、ベトナム製造業の購買担当者景気指数(PMI)は5カ月以上にわたって順調に上昇し、2月には54.3の高水準となりました。
このデータは、パンデミックからの回復と前進に加えて、国内外からの消費者需要が増加していることを示しています。そのため、関係各社には、今後のビジネスの流れに対応し、発展を継続させ、機会を十分に活用することが求められます。
海外からの投資呼び込み
パンデミック後のベトナムにおける製造業の質と可能性を考慮した、海外からの投資が増加しています。例えば、サムスンは最近、ベトナムに新しい生産拠点を設立するために9億2,000万米ドルを投資すると発表し、これにより大手テクノロジー企業のベトナムへの投資額は22億7,000万米ドルに増加しました。
ベトナムの製造業で海外からの投資が増えている背景には、自由貿易協定(FTA)などの政府による積極的な推進活動があります。FTAは外国企業との取引を容易にするだけでなく、相手国との関税削減を可能にし、ベトナムの製造業の競争力強化に貢献しています。
労働力のポテンシャル、外国投資の増加、政府の積極的な取り組みなど、総合的に見てベトナムの製造業は順調に発展しており、投資家にとって魅力的な分野となる傾向が急速に高まっています。製造業には、大企業、中小企業、外国企業、国内企業など、さまざまな背景や属性を持つ企業が関わっているため、いずれか一社が牽引する形ではなく、各社の連携によって業界が活性化していくと予想されます。