2022年7月、フィリピン情報通信技術省(DICT)は、同国の中小企業(MSME)の発展を促進するためのeコマースプラットフォームを開発する意向を発表しました。この新しいプラットフォームは、中小企業と消費者の双方が、デジタルマーケティング、オンライン決済システム、業務のデジタル化などのメリットを得られるエコシステムの構築を目指しています。
デジタルトランスフォーメーションに象徴されるポストパンデミック時代へと世界全体がシフトする中で、国連は、フィリピンの中小企業の成長を、同国の経済回復に不可欠なものと位置付けています。フィリピンでは、デジタル志向のライフスタイルを取り入れる消費者が増えており、中小企業のデジタル化に向けた取り組みが、今後数年間にわたり極めて重要となります。
中小企業のデジタル化の重要性
フィリピン上院は、同国の零細・中小企業を以下のように定義しています。「製造業、農業、サービス業に従事する事業活動または企業で、以下の条件を満たすもの。(1)資産規模(土地除く)が1億PHP以下であること、 (2)従業員数が200人未満であること」
フィリピンでは、中小企業が全企業の約99.5%を占め、現地の労働人口の約63%を雇用しています。しかし、フィリピン貿易産業省(DTI)のデータによると、高度なデジタルツールを取り入れている中小企業はわずか6%に留まり、23%はデジタル化をまったく行っていません。
YCP Solidianceは、オンラインセミナー「Road to Recovery:東南アジアにおけるパンデミック後のビジネス展望」の中で、以下の内容を指摘しました。「中小企業が規模を拡大し、東南アジアの変化に対応していくためには、デジタル化が不可欠です。中小企業は規模が小さいからこそ、デジタル化によって大企業より優位に立つことができます。多くの大企業は、起業したての企業よりもデジタル化に手間がかかるためです。中でもeコマースは、中小企業が大企業に対して優位に立ちやすい重要なポイントです」このセミナーの内容は、当社の同名のホワイトペーパーにてご確認いただけます。フィリピンでは、eコマースによるデジタル化への意識がかつてないほど高まっています。インターネット利用者の増加(2021年時点で7,300万人)により、この分野の流通取引総額(GMV)は2025年までに150億米ドルに達する見込みです。そのため、中小企業にとって、eコマースで業界の最先端を行くためにデジタル化に投資することが今後より一層重要になると言えます。
フィリピンの中小企業のさらなる発展
eコマースによってデジタルトランスフォーメーションを加速させたい中小企業には、官民のパートナーシップや、関連業界のスタートアップ企業などの取り組みを通じて、さまざまな機会があります。
フィリピンを拠点とするYCP Solidianceのマネージャー、Brett Zambarranoは、eコマースをフィリピンのスタートアップエコシステムの柱と位置づけ、継続的な成長を実現するためには、産業間、官民、消費者・企業間の連携が重要であると指摘しています。
フィリピン政府は、貿易産業省のデジタルトランスフォーメーション・チェックリストというオンラインツールを通じて、中小企業への支援も行っています。このツールは、中小企業が現在行っているデジタル化の取り組みを評価し、デジタル化を進めるための具体的なツールを提供するものです。また、情報通信技術省が独自のeコマースプラットフォームを構築する取り組みが今後さらに拡大することで、中小企業の間でデジタル化に対するリテラシーと教育が進み、デジタル化の実現に向けた主導権を握れるようになることが予想されます。