今年8月に、インド政府が「e-RUPI」というデジタル決済システムの導入を発表しました。
このシステム導入の発表により、インドのフィンテック分野への注目が集まっており、アンダーバンクトへの画期的なサービスとなることが期待されています。新型コロナウイルスの拡大によりキャッシュレス取引の重要性が高まる中、世界で最も人口の多いマーケットの一つであるインドにおいて、フィンテック業界は、これまでの常識を覆す千載一遇の好機となっています。
インドのデジタル決済システム
インドで最近導入されたデジタル決済システム「e-RUPI」は、QRコードやテキストメッセージを使って、食料の確保や医療サービスを受けるために必要な資金を必要としているインド人に向けてEバウチャー(オンラインで発行される商品・サービスチケット)を発行するサービスです。イリノイ大学が2020年に発表した論文によると、携帯電話を保有している人なら誰でもこのシステムを利用でき、銀行口座も必要ありません。そのため「e-RUPI」は、アンダーバンクトの成人1億9000万人にとって理想的な決済方法だと言えます。
また、特定の医薬品にしか使用できないなど、目的に応じて利用可能なプリペイド式のEバウチャーを使用することで、追跡が容易になり、悪用されにくいシステムとなっています。このシステムは、銀行間の取引を促進するために2016年に開始された国全体の総合決済インターフェイス(UPI)スキームの一部です。
デジタル化はインド政府の重要な課題となっていますが、このシステムの導入によって、デジタル化とフィンテックの導入が加速すると考えられます。すでにPaytm、PhonePe、RazorPayなどのデジタル決済はインド社会に普及しており、消費者の行動は電子商取引やタッチレス決済を好む方向にシフトしています。そのため、現在のフィンテック企業の課題は、現金での支払いしかできない大多数のアンダーバンクトの教育を行うことです。
フィンテックの未来
インドのフィンテック業界は、ここ数年で目覚ましい成長を遂げています。Times of Indiaは2021年初頭に、国内のユニコーン企業34社のうち、9社が金融テクノロジー企業に分類されると報じました。他の産業が低迷している中、フィンテック業界は、成長と日常的な使用に焦点を当ててきました。
India Briefingは、アンダーバンクトの問題解決に貢献することが、当面のフィンテックの主なトレンドになると予測しています。インドでは、新型コロナウイルスの感染が拡大しており、さらに感染力の強いデルタ株などの出現により、消費者の行動は電子ウォレットやその他のオプションを搭載したキャッシュレス取引を好む方向にシフトしています。しかし、国民の金融リテラシーや国のデジタル化レベルが高くないため、フィンテックの普及は容易ではありません。また、インドの特色として、複数の言語が使われていることや、地域固有のニーズを持っていることも、国全体でフィンテックを推進できていない原因の一つとなっています。
フィンテック業界のスタートアップ企業や、業界ニッチを模索する既存企業は、インドの様々な都市や地域ごとの問題を解決する地域密着型のソリューションを見つけなければなりません。政府の「e-RUPI」システムは、銀行口座を必要としないという点で好調なスタートを切っており、今後もアンダーバンクトへの普及による更なる発展が有望視されています。新型コロナウイルスからの脱却の目途が立っていない中、国内でフィンテックを劇的に成長させることは、全フィンテック企業が取り組まなければならない共通の課題です。