東南アジアはアーバン・エア・モビリティ(UAM)の導入に大きな可能性を秘めており、各国は物資の輸送だけでなく、旅客向けのUAMを導入するための枠組みも整えはじめています。例えば、2022年10月、シンガポール民間航空庁(CAAS)は、欧州航空安全機関(EASA)と、同国におけるアーバン・エア・モビリティ市場の発展に向けて共同で取り組む覚書に署名しました。これは、シンガポール初の国際的なUAM協定であり、安全規制や人材育成基準の共有と、アーバン・エア・モビリティの利点を国民に周知するための戦略策定を支援するものです。

シンガポールは東南アジアにおけるUAM導入をリードしていますが、他国ではまだモビリティ活用に向けた具体的な取り組みは進んでいません。サプライヤーやベンダーは市場参入に必要な技術開発を進めている可能性がありますが、東南アジア全体にアーバン・エア・モビリティが普及するためには、様々な課題について検討する必要があります。

東南アジアにおけるUAM市場参入のための検討事項
シンガポールを拠点とするYCP Solidianceのパートナーで、航空宇宙産業の分野で豊富な経験を持つJanesh Janardhananは、東南アジアにはUAMを利用する大きなメリットがあると指摘し、その例として、フィリピンやインドネシアなどの島国が、医療や物流、旅客輸送にUAMを活用できることを挙げています。一方で、東南アジアでUAMが普及するためには、行政当局による受容と、消費者が購入しやすい価格の実現も重要です。

企業は、各都市や国家がUAM技術を導入する準備ができているかどうかを見極める必要があります。準備状況を評価する際には、消費者の受容度と政策・法規制を考慮することが重要です。

医療と物流の連携向上に繋がる強力な活用事例があれば、行政当局や国民がUAMを肯定的に捉え、より広く受け入れる要因となります。民間企業がUAMを大規模に導入するためには、保健省、交通省、災害救助など公共部門の活用事例を検討し、必要な許可を得ることが重要だと考えられます。また、各国はUAMの安全区域、飛行禁止区域、訓練要件と、UAMの安全な使用に関する方針を定義して、企業が導入を加速できるよう枠組みを整える必要があります。

加えて、政府や地方自治体は、離着陸場所や飛行ルートの観点から各都市や地域の準備状況を評価し、他の航空交通を妨げたり都市交通を混乱させたりすることがないように、UAMのための領域を画定する必要もあります。例えば、UAMの離着陸場を都市部に建設するためには、20万ドル以上の費用がかかる場合があります。

さらに、UAMの認知度向上と受容促進のためには、公的機関や政府系企業が率先して重要な分野での導入を進めることが重要となります。例えば、国営の郵便・物流企業は、配達困難な地域へのアクセスにUAMソリューションの活用を検討することができます。

YCP Solidianceは、東南アジアのUAM市場参入を図る企業に対して、対象となる国や都市の準備状況の分析、経済的な実現可能性の評価、政府関連の手続きなど、長期的かつ複雑な参入プロセスの推進を支援します。また、行政当局や政府機関がUAMを採用するための政策策定や、業界の発展と技術普及のためのロードマップ作成、プライベートエクイティ(PE)企業や企業のベンチャー部門によるUAM企業へのデューデリジェンス・投資促進の支援も行っています。



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