中国は現在、電気自動車(EV)における世界最大の市場です。アメリカのピュー研究所によると、全世界の電気自動車生産台数1,020万台のうち、450万台以上が中国で生産されています。これは世界のEV市場の44%を占める規模であり、欧州の31%や米国の17%を大きく上回っています。実際、BYDの創業者であるWang Chuanfu氏は、2030年には中国の新車販売台数の70%をEVが占めるようになると予測しています。
現在、アジアの自動車産業は、中国、日本、インド、韓国を中心に競争が繰り広げられています。これらの国には世界有数の自動車メーカーが存在していますが、EVの製造と技術においてアジアを牽引しているのは中国だと言えます。
中国のEV補助金政策
中国で電気自動車が急速に普及している主な要因は、政府が2009年に開始した、購入者への補助金政策にあります。この補助金は2020年に終了する予定でしたが、新型コロナウイルスの流行により、政府は2022年までの延長を決定しました。Fastmarkets社によると、航続距離300〜400kmのEVには13,000元(約2,000米ドル)、航続距離400km以上のEVには18,000元(2,778米ドル)の補助金が割り当てられています。
中国政府は国内の電気自動車産業の拡大に力を入れており、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙によると、2030年までに全乗用車の40%が電気自動車になると予測されています。また、中国は二酸化炭素排出量の大幅な削減を目指しており、電気自動車の増加はこの目標の達成に不可欠であると考えられています。
コアテクノロジーの重要性
CNBCの報道によると、2030年までに電気自動車の全販売台数の60%を中国ブランドが占めるようになると言われています。中国国内では、欧米メーカーのテスラがいまだに高い人気を誇っていますが、欧米産の自動車性能に満足できず、国産ブランドを選ぶ消費者も増えています。例えば、ドイツの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンは、電気自動車のフラッグシップモデルであるIDシリーズを中国で発売しましたが、大きな反響はありませんでした。ロイターの記事によると、中国の消費者は、まるでSFのようなEV最先端技術を期待しているため、フォルクスワーゲンの自動車が「スマート」な機能を備えていないことが販売不振の主な原因とされています。
代表例として、中国産EVのリーディングカンパニーであるXPengは最近、「P7」モデルにVPA(Valet Parking Assist)と呼ばれる近未来的なアップグレードを実施したことが挙げられます。VPAは同社の新しい自動駐車支援機能で、自律走行機能の突破口になると言われている記憶型駐車システムです。
中国ローカル市場のノウハウ
中国では、小規模なメーカーも人気を博しています。SAIC-GM-Wuling社のモデル「Hongguang Mini」は、4,500米ドルという低価格で販売されていますが、大手メーカーの販売台数を大きく上回っています。カタールの衛生テレビ局アルジャジーラによると、同社はわずか9カ月で27万台を販売し、中国で最も売れているEVになったとのことです。
また、他のメーカーと異なり、Wuling社は現地の市場に精通していることから、若年層、主に女性の購買を獲得することができました。同社は、ミレニアル世代やZ世代にターゲットを絞って、ソーシャルメディア上で積極的かつスピーディーに対応するマーケティングキャンペーンを展開しました。それによって、高価な大手メーカーのEV車購入を躊躇する消費者との信頼関係を構築することに成功しています。
「Hongguang Mini」の成功の要因は、その手頃な価格だけではありません。カスタマイズが可能であることも大きく影響しています。豊富なカラーバリエーション、最新のスマートテクノロジーを搭載し、使用者の個性や趣味を反映した「ステッカー」をボディやパネルに貼ることで、簡単にカスタマイズができます。
未来の展望
世界中でEV産業が発展していく中で、政府の支援、優れた技術、市場のノウハウなどを利用して中国が市場での地位を確保しようとする姿勢は、国内市場の未来を明るく照らします。洗練された最先端の製品を生み出すことで、この分野をさらに発展させることができるでしょう。
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