第四次産業革命(4IR)を迎え、ビジネス環境は大きく変化しています。事業戦略においてスマートテクノロジーツールが重要視されるようになり、特に人工知能(AI)は、アジアのビジネスシーンにおいて重要度が急速に高まっています。
アジアにおける今後のAI動向
アジアでは、AIが本格的にトレンドとなり急速かつ大規模に普及する前から、AIがビジネスにもたらす好影響に注目が集まっていました。たとえばシンガポールは、民間企業がAIを導入する際の指針となる「モデルAIガバナンスフレームワーク」を2020年に発表しました。
市場調査会社であるInternational Data Corporationのレポートによると、アジア太平洋地域におけるAI関連支出は、2022年の206億米ドルから2025年には466億米ドルに増加する見込みです。また、2021年から2026年までの年間平均成長率(CAGR)は23%に上ると予測されており、アジア太平洋地域はAIが最も急速に成長している地域の一つであると言えます。
そのため、2023年以降にアジアで投資を検討する場合は、ビジネスにおいてAI活用トレンドが継続することを想定する必要があります。
AIを活用したビジネスモデル
一般的に、AIはビジネスにおいて、コスト削減や効率向上、そして変化が著しい市場における競争優位性獲得に役立つとされています。幅広い用途に活用できることから、アジアではさまざまな産業で導入が進んでいます。
たとえば、中国に拠点を持つ多国籍テック企業アリババは、AIを活用した物流ソリューションアプリ「EasyDispatch」を開発しました。このアプリは、リアルタイムの配車とルート提案によって、サプライチェーンマネジメントを改善します。このように、データ収集とオートメーションの分野では、AI活用が新たなトレンドとなっています。AIによってビッグデータを収集、分析することで、人間では実現できない速度で、適切な意思決定を行うことが可能になります。
また、AIは、言語モデルに基づくAIチャットボット「ChatGPT」のようなAI対応プラットフォームの登場を契機として、コンテンツ制作分野でも普及が進んでいます。迅速なアウトプットはあらゆる業種で評価されるため、大企業では従業員にAIを支給する取り組みも始まっています。2023年3月の「Nikkei Asia」の報道によると、パナソニックホールディングスのシステム開発部門は最近、日本の全従業員に対してAIアシスタントの提供を開始し、資料作成の自動化などに活用しています。
この他、プロジェクトマネジメントにおけるAI活用も、魅力的なビジネス投資先として挙げられます。「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌のレポートによると、AIと機械学習(ML)など他のスマートテクノロジーを組み合わせることが、2030年までにプロジェクトマネジメント分野で主流となる可能性が高いとされています。今後こうしたツールは、プロジェクトの選択、優先順位付け、モニタリング、レポート、テストなど、プロジェクトマネジメントに関する複雑な作業に対応できるよう発展していくと考えられます。これに伴い、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)が顧客に対応する方法や、従業員が職務を遂行する方法、経営者に求められる能力などにも変化が生じる見込みです。
AI活用に関心を持つ企業は、AIツールの導入方法と、それによって改善できる事業領域を早急に明確化する必要があります。アジアではAIを迅速に導入し、そのメリットを知る企業が増えていることから、事業投資家もまた、アジア進出を希望する場合は積極的に投資機会を模索すべき状況と言えます。
さらに今後は、企業が戦略やモデルを構築する際に、ツールとして、また方針を示す役割としてAIが活用されることも期待されます。
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