世界各地でフィンテックの導入が飛躍的に拡大する中、同様の動きがアジア各国にも及んでいます。特にタイでは、フィンテック分野が近年大きく発展してきました。タイのフィンテック産業は、2023年も引き続き成長を続ける見込みです。

公共部門による取り組みが成長を促進

タイでは公共部門がフィンテック関連の取り組みを積極的に推進しており、市場拡大に大きな役割を果たしています。

たとえば、タイ中央銀行(BOT)は、フィンテックを活用したサービス向上に注力しています。BOTが作成し、2018年1月に公開したフィンテック・アプリケーション「PromptPay」は、当初国内のキャッシュレス取引を対象としていました。しかし近年は、ラオスやカンボジア、ベトナムなど、他国での決済にも対応するサービスへ発展しています。

フィンテックを活用してこうした成功を積み重ねるために、BOTは現在、国際取引を円滑にする新たな決済システムの開発に取り組んでいます。またタイ政府も、リテール中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行や、ピアツーピア(P2P)レンディングシステムの構築など、フィンテックに関する取り組みを進めています。

公共部門は主に景気回復を目的としてフィンテック関連の取り組みを進めていますが、フィンテック関連プロジェクトに対する継続的な投資は、フィンテック産業のエコシステムを成長させることにも繋がります。

タイにおけるフィンテック産業の展望
アジア全体で金融サービスの需要と普及が拡大していることから、2023年にはタイでも、フィンテック企業やデジタルバンキングサービスが急速に成長する見込みです。ノンバンクも含めたさまざまな金融機関が、幅広い分野でフィンテックを活用したイノベーションを進めることが予想されます。また、流通、通信、ハイテク企業なども、フィンテックの成長において重要な役割を果たすと考えられます。

テクノロジー分野など他業界のノンバンク企業も、アジアで銀行業界への参入に成功しています。具体的にはGrabやSea Groupなど、フィンテックを活用したベンチャー企業を挙げることができますが、これは成功事例の一部に過ぎません。配車サービスや食品配達サービスを提供するスーパーアプリGrabは、アプリケーション内でスムーズな決済を実現するためにデジタルウォレットを開発しました。Sea Groupも同様に、eコマースプラットフォームShopeeの利用者向けにデジタルウォレットを開発しました。

これらの成功事例から、フィンテック産業は今後ますます成長していくことが期待できます。加えて、さまざまな技術ツールを活用することで、この成長はさらに加速していく可能性があります。バンコクポスト紙もまた、フィンテックは金融包摂やエグゼキューションの柔軟性といった面でメリットがあることから、クラウドベースの技術を中心に今後さらに発展していくと予測しています。

タイのフィンテック産業はまだ初期段階ですが、市場には有望な投資機会が存在しています。フィンテック分野への参入には多くの関心が寄せられているため、早期に資本参加し、パートナーシップを構築することが重要です。2023年、タイにおけるフィンテック産業の成長は、官民双方からの高い関心によって牽引されると考えられます。

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