2022年下半期、シンガポールの企業やプロフェッショナルは何に備えるべきでしょうか。YCP Solidianceでは、現地プロフェッショナルによる調査・分析に基づき、これまでに紹介したシンガポールの最新ビジネストレンドを再確認できるレポートを連載します。シリーズ第1回はこちらからご覧ください。
当レポートでは、シリーズ第2回として、2022年第3四半期~第4四半期に向けたシンガポールでのデジタル化推進状況について解説します。また、こちらからニュースレターにご登録いただいた方には、当社の最新レポートをお届けします。
2022年初頭、デジタル化はシンガポールのビジネスにおいて、特に今後数年間は重要な役割を果たすと予想されていました。当社の当時のレポートでも、デジタル化は短期的なトレンドではなく、強い持続力を持つムーブメントであると結論づけました。
2022年下半期に入った現在でも同じことが言えますが、焦点は新型コロナウイルスの流行中に実現したデジタル化の成長を持続させることに移ってきています。
シンガポールにおけるデジタル化の進展
国内にのデジタル化推進において、シンガポール政府は主体的に役割を果たしつづけています。政府は、既に確立された国内のデジタル化プログラムとは別に、2022年の国家予算に約2億米ドルを計上し、デジタル化に対する長期的なコミットメントを強化しています。このことは、デジタル化に伴う技術革新と技術力向上が、シンガポールにおいて官民ともに重要な課題であることを示しています。
また、2022年下半期に入り、デジタル化に関する一部産業が顕著な成功を収めています。具体的には、ロボット産業が急成長しており、シンガポールのロボット導入率は約20%と、世界平均の16%を大きく上回っています。この数字は2010年~2015年の記録ですが、その後も労働市場の逼迫に伴う人手不足などの問題にロボティクスを活用することで、この傾向が顕著に現れています。
シンガポールは、短期と長期の両方を視野に入れたデジタル化の成長を持続させるために、具体的な目標を掲げたいくつかの重要な取り組みを実施しています。主なデジタル化の取り組みは以下の通りです。
- 先進的デジタルソリューション:建設業界の中小企業や大企業が、一般的な作業から特殊な作業に至るまで、あらゆる業務にロボティクスとオートメーションを導入することを目的としています。
- デジタルスキームの成長:デジタルプラットフォームを通じて、中小企業が海外市場の新規開拓、事業拡大を図ることを目的としています。
- インフラの改善:今後数年間でインターネットの通信速度を10倍にし、6G技術に徐々に移行していくという目標に向けて、ブロードバンドと接続性の高いインフラへの投資により、デジタル化のための強固な基盤構築に取り組みます。
- テクノロジーの統合強化:シンガポール企業へロボットオペレーティングシステム(ROS)などのデジタルソリューションの活用を奨励することで、ケイパビリティ向上、利益最大化、技術習得率向上を図ります。
デジタル化の動向
シンガポールはデジタル化とそれに関連するロボット工学などの発展に投資を続けており、またデジタル化を柔軟に活用できる産業もあることから、今後この分野ではますます多くのビジネスチャンスが生まれると考えられます。例えば、ロボット工学は、メーカーや物流企業が倉庫での作業効率を最大化するために活用できます。
また、ヘルスケア産業は、自動化、人工知能(AI)、ビッグデータなどのデジタルソリューションの恩恵を受けることができます。他の東南アジア諸国の例として、YCP Solidianceのホワイトペーパー 「タイにおけるスマートホスピタルの未来」では、タイの病院において、AIチャットボット、遠隔医療、遠隔モニタリングなどのスマートテクノロジー導入により、業務効率化や労務管理の改善などのメリットが得られた事例を紹介しています。タイの隣国であるシンガポールでも同様に、ヘルスケアビジネスがデジタル化をスムーズに導入する方法の指針として、このフレームワークを活用することができると考えられます。
中小企業もまた、デジタル化によってデジタルネットワークにアクセスする機会が得られ、ビジネスの幅を広げることができます。さらに、デジタルプラットフォームと関連テクノロジーを利用することで、中小企業は大企業との競争に打ち勝つことができるようになります。今後、シンガポールでは中小企業のデジタル化促進が重要視されると考えられます。
総合的に判断すると、シンガポールのデジタル化は、2022年の第3四半期と第4四半期だけでなく、長期的にも重要な課題であると言えます。シンガポールが意欲的にデジタル化を推進し、革新的な国家を目指していることはデータからも明らかであり、関係者や投資家は積極的にデジタル化に関するビジネスチャンスを模索すべき状況です。
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