2022年下半期、フィリピンの企業やプロフェッショナルは何に備えるべきでしょうか。YCP Solidianceでは、現地プロフェッショナルによる調査・分析に基づき、これまでに紹介したフィリピンの最新ビジネストレンドを再確認できるレポートを連載します。シリーズ第1回はこちらからご覧ください。
当レポートでは、シリーズ第3回として、フィリピンのeコマース業界の現状と2022年後半~2023年初頭の見通しについて解説します。本シリーズの今後の連載をお読みいただくには、こちらからニュースレターをご購読ください。
フィリピンでは、デジタル化によってさまざまな産業が加速度的に発展しています。その一つが、新型コロナウイルスのパンデミックによって大きく成長したeコマース分野です。
2022年第3四半期~2023年初頭も、政府の継続的な支援と、デジタルプラットフォームを活用する中小企業(MSME)の増加によって、フィリピンではeコマースのトレンドが続くと考えられます。
フィリピンのeコマースエコシステム
eコマース産業の成長には消費者のデジタル活動が大きく影響するため、インターネット普及率やソーシャルメディアなどの要素は、eコマースの将来性を示す重要な指標となります。
DataReportal社の2022年の調査報告によると、フィリピンのインターネット普及率は68%で、2021年から2.8%増加しています。また同調査によると、2022年1月時点のフィリピンのソーシャルメディア利用者は、前年比310万人増の9,200万人以上に上りました。フィリピンのデジタルエコシステムは、パンデミックによるeコマースの急成長を促進しただけでなく、eコマース分野の将来性を広く周知することに成功していると考えられます。
フィリピンのeコマースエコシステムは、すでに市場の成長環境を整えていますが、販売者・購入者双方にメリットをもたらすマーケットプレイスの多様化によって、今も発展しつづけています。2022年初頭には、2021年と比べて、ShopeeやLazadaといったeコマースコングロマリットから独立した、より小規模な企業が参入しやすい状況に変化してきました。
また、Facebook Marketplace、Instagramショッピング、Shopify、Cococartなど、さまざまなオンラインマーケットプレイスが生まれたことで、大手ECサイトのWEB広告費やプラットフォーム利用料を除けば、中小企業にとってECに参入するハードルは低くなっています。
ソーシャルメディアプラットフォームを利用したeコマースには、以下のようなメリットがあります。(1) 中間業者を通さず、消費者へ直接アプローチできる。(2) 新たなカスタマーエンゲージメントが可能になる。(3)商品の宣伝コストがかからない。そのため、今後ソーシャルコマースへの注目が高まり、フィリピンのeコマース経済がますます発展することが期待されます。
フィリピンのeコマースの未来
フィリピンにおけるeコマースの多様化は、今後も販売者・購入者双方の参入を促進し、eコマース市場全体の成長維持に繋がる見込みです。フィリピンのEC事業者の多くは、ソーシャルマーケットと大手ECプラットフォームの両方で商品を提供するオムニチャネルでのアプローチを模索しており、これはECエコシステムの多様化継続に貢献すると考えられます。
フィリピンのeコマース産業が今後も成長を続けるためには、官民の協力体制も重要です。たとえば、貿易産業省(DTI)などの政府機関は、EC推進のロードマップ「Philippine E-commerce Roadmap」を発表しています。このロードマップは、eコマース産業の長期的な成長と、利用者の安全性・包括性確立を目的としています。
フィリピンのeコマース産業には高い関心が寄せられており、新たなeコマースチャネルの出現や政府による支援も続いていることから、2022年後半以降もこの成長傾向は続くと予想されます。2023年初頭に向けてさらに発展し、注目を集める産業となる見込みです。
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