シンガポールではフィンテック産業が急速に成長しており、それはEndowusをはじめとする現地のフィンテックスタートアップ企業の台頭からも明らかです。日経アジアによると、Endowusには、デジタル資産管理プラットフォームを立ち上げてからわずか20カ月となる2020年7月までに、約7億3,000万米ドルの運用資産が登録されました。
Endowusのような企業が成長したことで、シンガポールのフィンテック分野は大きな恩恵を受けており、他の企業も同様の成功を目指しています。この動きにより、官民を問わず、フィンテックがもたらす利益を活用する道が開かれるとともに、国内のフィンテックの普及が加速しています。
シンガポールのフィンテック業界の動向
シンガポールのフィンテック業界が成長を遂げている背景には、この業界に対する高い関心があります。フィンテックの重要性と様々なメリットが、消費者に広く知られるようになりました。その一例として、Endowusのような自動投資サービスや、暗号通貨での取引で得られる不労所得が挙げられます。
フィンテックは様々な産業に応用できるため、シンガポールではフィンテックを専門分野に特化させたビジネスが誕生しています。中でも注目されているのが、環境、社会、ガバナンス(ESG)投資への応用です。国や企業がより持続可能な社会を目指す中、フィンテック企業であるHashstacsは、「ESG Registry」と呼ばれるブロックチェーン型のプラットフォームを開発しています。このプラットフォームにより、オフィスビルの電力使用量や物流企業の二酸化炭素排出量データなど、複数のESG関連の統計データを登録・追跡することが可能になります。
民間企業における業務への応用だけでなく、消費者の間でもフィンテックがトレンドになっています。今後、シンガポールの人々の金融リテラシーが向上し、フィンテックの活用が多くの人にとってより日常的なものになることが予想されます。このことは、フィンテックが単なる一時的なトレンドに留まらず、長期的に定着していることを示しており、今後、フィンテックの普及がますます進むことが期待されます。
コラボレーションによるエコシステムの構築
シンガポールでフィンテックが発展しつづけるためには、国内外でのコラボレーションが重要なステップとなります。提携の機会を模索することにより、フィンテックの普及と業界の発展が促進されます。
シンガポール政府は、国際的な提携を通じたフィンテックの強化に積極的に取り組んでいます。2018年には早くも、シンガポールとインドのマハーラーシュトラ州の政府が、ブロックチェーンやモバイル決済などの技術を活用したフィンテック事業に関する提携を強化する覚書を交わしました。さらに、2022年4月にはオーストラリアとの間で、フィンテック分野での協力を強化する両国のコミットメントを確立するために「フィンテックブリッジ協定」を結んでいます。これらの協定は、シンガポールの、アジアのみならず世界のフィンテックのハブになることを目指すという長期的な目標を反映しています。
一方、国内のフィンテックの提携も、参加とエンゲージメントという最も基本的なレベルではすでに始まっています。フィンテック企業が観客と関わりつづける限り、間違いなく業界の成長は続きます。また、中小企業間のフィンテックソリューションの統合など、さらなる提携の可能性を探ることも可能です。(取引を促進するモバイル決済、フィンテックプラットフォームと関連サービス間のクロスアプリケーション機能など)
シンガポールのフィンテック産業が様々な産業への応用を通じて成長しつづけ、また、デジタル・エコシステムの構築に向けた各方面の取り組みが続けられることによって、シンガポールは世界のフィンテックのハブを目指す最有力国家となることができます。企業や専門家は、この産業がもたらす可能性について早急に理解し、検討し、投資するべきです。
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