2022年3月、サウジアラビア王国(KSA)は、フィンテックの国内での規模拡大に向けた取り組みとして、リヤドに金融技術センターを開設し、起業家と投資家のためにフィンテック投資を加速させるプロジェクトを開始しました。

サウジアラビアでは、フィンテック市場が2021年の最初の8カ月間で約1億5,700万米ドルを生み出したことを受け、国の目覚ましい成長を維持するための取り組みが始まっています。  


サウジアラビアのキャッシュレス社会

金融技術センターの立ち上げはサウジアラビアのフィンテックの成長過程における重要なマイルストーンですが、成長を促進するための取り組み自体は、数年前から着実に進められてきました。たとえば、2016年には「サウジ・ビジョン2030」構想が発表されています。この構想の一環である経済の石油依存脱却・多角化のためには、フィンテックの利点を活用することが重要な一歩となります。

YCP Solidianceのホワイトペーパー「2030年までにキャッシュレス社会を実現するためのサウジアラビアの道のり」では、サウジアラビアが目指すキャッシュレス社会を実現するための3つの重要な要素として、(1)国民がデジタルと金融のリテラシーを身につけること、(2)信頼できるインターネットと決済プラットフォームという適切なインフラ、(3)健全かつ長期的なイノベーションを促進するフィンテックエコシステムが挙げられています。

サウジアラビアのフィンテック業界に企業が新規参入する際や既存の企業が投資を行う際には、上記の要素を考慮することが重要です。また、これらの要素を知ることは、有望なビジネスチャンスにもつながります。サウジアラビアのフィンテック業界はまだ発展途上であり、企業規模の大小を問わず、新たな参入は業界に大きなインパクトを与える可能性があるためです。


加速するサウジアラビアのフィンテック
フィンテックのどの分野が最も投資価値が高いかを深く理解するために、企業はサウジアラビアの新たな業界トレンドに関心を持ち、それに基づいた意思決定を行う必要があります。例えば、YCP Solidiance のホワイトペーパー「サウジアラビアを中東の物流大国へ」では、トレンドとなる産業には共通して、ロボティクスや人工知能(AI)などのデジタルソリューションが活用されていることが調査に基づいて示されています。

サウジアラビアのフィンテック業界でも、すでにこのようなデジタルツールの活用が見られます。Arab Newsによると、いくつかのフィンテック企業は、サービスのデジタル化によって事業拡大に注力しています。例えば、エジプトに拠点を置くフィンテック企業のFlapKapは、サウジアラビアでの事業開始を見据えて、データ分析から得られるAIベースの実用的な金融インサイトを顧客に提供しようとしています。

大企業の間ではフィンテック分野における複雑なデジタルツールの活用がトレンドとなっていますが、昨今の急速なデジタル化の中では、中小企業もフィンテック・ソリューションを活用することができます。具体的には、小売業や食品業界の企業が、モバイル決済やプラットフォームなどのフィンテック・ソリューションを導入する方法を積極的に模索することが考えられます。

サウジアラビアのフィンテック業界は急速なペースで拡大しており、新規・既存を問わず多くの参入企業にビジネスチャンスが生じていることから、今後数年間は継続的な成長が見込まれます。サウジアラビアのフィンテックが高い関心を継続的に集めていることを考慮すると、国内外の投資家にとって、できるだけ早く参入するべき状況であると言えます。


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